ミッシング・チャイルド・ビデオテープ(2025)
- ラーチャえだまめ
- 1月31日
- 読了時間: 7分

【原題】ミッシング・チャイルド・ビデオテープ
【監督】近藤亮太
【出演】杉田雷麟 平井亜門 森田想ほか
【あらすじ】
一緒にかくれんぼをして遊んでいた弟が失踪してしまったという過去を持つ兒玉敬太。その後も弟の日向は見つからないままで、現在の敬太は行方不明者を捜すボランティア活動に従事している。そんな彼のもとに、母親から古いビデオテープが送られてくる。そこには、日向がいなくなる瞬間が映されていた。霊感のある同居人・天野司はそのビデオテープに禍々しさを感じ、敬太に深入りしないよう忠告するが、敬太は忌まわしい過去の真相を暴くために動きだす。敬太を取材する記者の久住美琴も加わり、3人は日向が失踪した山に足を踏み入れるが……。(映画.COMより)
【感想(ネタバレなし)】

『“見せない”恐怖』
どーもぷよぷよで元カノをボコボコにしたら振られましたラーチャえだまめです。本日はそのぷよぷよではない誰もいない空間を見ながら「ぷよぷよがいるよ?」……ぎゃああああああああ!!!
【ミッシング・チャイルド・ビデオテープ】!!!2025年早速の「本命」登場。公開前から劇場の予告映像でここ数年のJホラーとは明らかに空気が“重い”第六感がクンカクンカした方も多いのでないでしょうか??とっくの昔に枯れ果てた“ガチJホラー”の再来か?予告だけでここまで期待値上がったのはJホラーで初めてかもしれない。早くも“今年度最恐”とも呼ばれておりましたが、かく言う私も初めは半信半疑。しかしTV東京系列で深夜放送され現在はYouTubeで視聴可能の「イシナガキクエを探しています」の演出家の監督作、という情報を知り劇場案件を確信しました。ちなみに「イシナガ〜」の制作スタッフには他にも大人気YouTubeホラーチャンネル「ゾゾゾ」の皆口大地氏が参加、まあそちらもめちゃくちゃ面白いのでオヌヌメしたい所ですが(話が逸れました)その「イシナガ〜」そして「ゾゾゾ」が好きな方にはもう「間違いなく刺さる1本」であると、観る前の予想が視聴後“確信”に変わるほど、大げさかもしれないがここは声を大にして言いたい

「Jホラー」完全復活おめでとうございます
2015年。行方不明者の捜索ボランティアに参加する“児玉敬太”の元に母親から1本の“ビデオテープ”が送られてくる。そのビデオテープは敬太が幼い頃に撮ったものだった。そこには13年前に家族でキャンプで訪れた山で行方不明となる弟の“日向”の姿も映っていた。山で日向が失踪する瞬間まで映り込むそのビデオテープを「焼いたほうがいい」と霊感を持つ同居人の“天野司”に忠告されるも、敬太は長らく避けてきた失われた日向の存在ともう一度向き合う為に司と共に日向が失踪した山に向かうのだが……
……ところ変わって2024年ゾゾゾメンバーが噂となった山を捜索、、、、までがセットですよね??
劇場行ったら早期特典で今年実写化もされる「近畿地方のある場所について」著者でホラー作家“背筋”氏の短編もらえるわ購入したパンフレットは“文庫本”すぎるわ今年3月に「リング」の著者“鈴木光司”氏の14年ぶりの新作が出るとか本を読め圧力が凄い…!?

そんな本作の発端はKADOKAWA主催、長らくJホラーを牽引する清水崇氏が選考委員長として次世代ホラー監督の新たな登竜門として企画された「日本ホラー映画大賞」。受賞者には大賞作品のリメイク権か新規作品での商業映画デビューが確約される。今作はその第2回で受賞した同名短編を長編化したもの。ちなみに第1回大賞に選ばれたのが前回ここでご紹介した「みなに幸あれ」。そして本作の公開を記念して現在現在Amazonプライムで第1回と第2回の選考作品が配信中。ということでオリジンである短編版を見てから劇場に足を運びました。
先に短編から言わせて下さい。“VHSを見て「恐怖」に感染する”、見たらビデオの呪にいつの間にか取り込まれる恐怖、という意味で今作はまさしく「リング」と“精神的”に非常に通じていると感じましたね。ただかつてヒットした呪われたビデオを令和に“焼き回した”わけではない。公開当時まだご家庭で一般的に使われ、もしかしたらすぐ近くで本当にこのようなビデオが出回っているのではないか、という“至近距離の恐怖”で成功した「リング」とは違い、今やとっくの昔の“遺産”であり身近に手にする機会を失ったビデオが、突然何の脈絡もなく“掘り起こされ”それを見る行為自体を“あまりしない奇妙なこと”に結びつけ、異質で何かやばいことをしている気分にさせる、これが令和版VHSの恐怖演出かぁ〜!!と思わず唸ってしまいました。

でその短編を長編化された本作は、全体を通して「短編の方がクオリティが高い」のはもう疑い様のない事実かなと。劇映画であるが故にどうしても後半は映画的な演出がプラスされ、それが余計なノイズになってしまっていると感じましたね。この辺りはパンフを読んで総合プロデューサーの清水崇氏が“あえてそのようにした”と書かれていて、うーんここは個人的な好みですが、私はむしろオリジナルの雰囲気のまま、下手にテコ入れしない方が良かったんじゃないかと思いました。あと失踪する“場所”もワンフロアだった短編版と違い長編版は正直「単にうまく隠れただけなのでは?」と思えてしまう隙がある。
けれどそれを差し引いたとしてもJホラーとしてのクオリティは抜群に高く、はっきり言ってここ最近のJホラー、「vsシリーズ」や「村」シリーズのような若手アイドルや俳優の登竜門的意味合いの方が強くワーキャー叫ばせればそれで勝ちなティーン向け、「都市伝説」シリーズのような、実際の書き込みだったからリアリティがあって怖いのに、ネタだけを抜き取って映画的な味付けをしたただの三流ホラー、、、正直全然物足りない物足りない、言ってしまえばお子様ランチのようなガツンとした怖さがないところに去年「サユリ」という漫画原作ではありますが“今までになかった”全く新しい進化系のJホラーが爆誕。あれはあれで面白かった。でもあれは恐怖と笑いと感動の三者が見事にスクラムを組んだ今までにない“NEWJホラー”なんですよ。本作はド直球スタイルの「王道Jホラー」。“恐怖”とは何か、その根源を日本映画特有のジメジメっとした湿気の高い雰囲気を使いとことん追求した純度100%のJホラーでしたね!!まさしくJホラー転換期とされる90年代の「リング」「呪怨」のDNAを汲んだ作品で、アメリカンホラーのような“ジャンプスケア”なんて使っていません。それどころか「リング」のようにビデオから霊が飛び出すとか「呪怨」のようにとにかく四六時中霊が出まくる、みたいな人知を超えた存在が“実体化”して出るようなシーンもない。
では一体本作の何が怖いのか。失踪する日向の映った“あまりにリアルなビデオ映像”もその一つではありますが、今作の恐怖のベースになっているのが

怪談話
これなんですよねぇ。あえて長回しで語り部が怖い話をするシーンがいくつも登場するんですよ。劇中で怪談話をするのです。それが視覚的にビビらせるシーンより数倍恐ろしいのです。映画だけど語られるその話自体は、ノンフィクションなんじゃないかとさえ思えてしまうほどリアルなんですよね。見て怖がらせるのではなく“聞いて怖がらせる”「見せない怖さ」というのを本作では一番に追求していて、それこそが我々視聴者の“脳内補完”を利用した“最恐演出”なんじゃないかと……。

その先駆者として「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」という映画がありますがそれに近いですね。“森で失踪”とか類似点もあるし。あとビックリしたのがパンフで監督が参考にした作品の中に「レイクマンゴー」が入っていたこと!!いやー以前ここでもご紹介しましたが、ネットでもそんなに話題になってないからタイトルだけでも挙げてくれて感謝感激なんであります!?あれはめちゃくちゃ怖かった記憶があります(今でもクライマックスの衝撃は忘れない)そんな“モキュメンタリーホラー”の色も非常に強く、見ていて現実と空想の区別が揺らぎかねない!?この演出は「イシナガキクエ〜」のようなリアルな気持ち悪さがあります。霊よりも怖いのは人間の「非道」さ、という点でも似ている。
グループでワーキャーして見るような映画ではありません。先ほども言いましたがジャンプスケアがある映画ではないので。故に人によっては“地味”と感じる方もいるでしょう。その地味さ、後からジワジワとくる恐怖、“帰り道が一番怖くなる”そんな映画。できれば一人で見に行くことをオヌヌメしたいですね。登場人物の心情ともシンクロする“孤独”こそが、最高のスパイスになること必須……。
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