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ボーはおそれている(2023)


【原題】Beau Is Afraid

【監督】アリ・アスター

【出演】ホアキン・フェニックス ネイサン・レイン エイミー・ライアンほか

【あらすじ】

日常のささいなことでも不安になってしまう怖がりの男ボーは、つい先ほどまで電話で会話していた母が突然、怪死したことを知る。母のもとへ駆けつけようとアパートの玄関を出ると、そこはもう“いつもの日常”ではなかった。その後も奇妙で予想外な出来事が次々と起こり、現実なのか妄想なのかも分からないまま、ボーの里帰りはいつしか壮大な旅へと変貌していく。(映画.COMより)






 
【感想(ネタバレなし)】

『“我々”は、何を“おそれている”…?』

 




どーもどーも公衆トイレの大の方でトイレットペーパーをカタカタ鳴らしたりウォシュレットの音が聞こえたあとまた静まり返って出てこない人は絶対スマホいじってるだけだと思いますラーチャえだまめです。あるいは何かを恐れてトイレから出たくないとでも言うのでしょうか…??本日はそんな被害妄想が過ぎる中年がいたんですよ〜。なぁーーにぃーー!?



【ボーはおそれている】!!!アリ・アスター!!!!いやーついに日本でもお披露目となりました、A24スタジオが今一番“手放したくない”2018年水星の如く現れた超新星……も今や昔、そのデビュー作「ヘレディタリー」「ミッドサマー」と立て続けに我々観客を恐怖と混沌のどん底に陥れ日本でも社会現象を巻き起こした張本人、アリ・アスター監督の長編第3弾、となれば?当然今年2024年の“超目玉作”として期待のハードルを上げざるを得ないシネマファン待望の「ボーは恐れている」!!これまた一周回ってシンプルかつ奇を狙った邦題で日本支部も気合入ってんなーと思ったら原題は“Beau Is Afraid”……そのまんまじゃねえか!!まぁそれはよしとして去年のナヨナヨなナポレオンに続き今年もまだ「ジョーカー2」が控えているというのに!?話題作に出ずっぱりの異星人にバットでフルスイング俳優ホアキン・フェニックスというカメレオン俳優×アリ・アスター……いったいどんなケミストリーが起きてしまうのか??



いやーこれまた既に観た方ならばおわかりいただけるかと思います“今作も”アリ・アスターさん、「マジぶっ飛んでる。」と言っても過言ではない!?以前「ミッドサマー」の試写会にお邪魔した際、壇上に登場した“生”アリ・アスターが「キミたち何を怖がってるんだい?私はこの映画を“ホラー”だと思って撮ってませんよ?」と満面の笑みでニヤニヤしながら楽しそうに語る姿を見て「この人“マジモン”や……」と絶句した記憶が蘇る、「ヘレディタリー」で最も居心地のいい“マイホーム”という「場所」と“親族”という「人」を「害悪」へ変貌させ「どうあがいても“絶望”」な状況を作り出し、夜なのに、さまぁ〜!!「ミッドサマー」では“真っ昼間なのにホラー”なのがそもそも異様で、鑑賞後改まると「私がカレから救われる10のこと」みたいな実はラブコメ映画だった!?という見方も出来てしまう不思議。一見するとホラーと相反する“明るい要素”にドス黒い恐怖というスパイスを混ぜ合わせ「ソフトクリーム芋けんぴは実は美味い」みたいな妙にクセになる異次元ワールドを作り出すのが彼の最大の特徴



で3作目の最新作も勿論、根底にあるのは“ホラー”であります。でも当然そうド直球にやるはずもなく今回はホラーと何を“かけ合わせて”しまったのか……













究極の“笑い”は、実は“ホラー”





“やり過ぎなホラーはコメディになってしまう”「Jホラー」理論にも通じる本来ならホラー作家が一番気をつける“失敗”要素を?今回なんと逆手にとって「ならめっちゃコメディやれば実はそれってめっちゃ怖くない?」と思わせてやろうというのです…!?





 




いやー今回はマジで“めっちゃ笑えました”。鑑賞中も周りでクスクスと笑い声が聞こえておりました“オデッセイ・スリラー”と公式が謳っておりますが私的にはこれは壮大な「ギャグ・スリラー」ですね!!特に前半はもうずっと面白いの何の。だってホアキン演じる独身中年童貞ボーがどこのスラム街だよ!!レベルの無法地帯エリアで「What!?」と連呼しながら「理不尽過ぎる扱い」を受ける日々。いやもうこれ水曜日のダウンタウンじゃん、あるいはユーチューブの“過激な笑い”のソレ。一つ例にあげるとボーが母の死の知らせに動揺しながら風呂に入るシーンで、ふと見上げると浴室の天井に知らないおじさんが張り付いてんのよ、手足ピクピクして今にも落ちてきそう勢いで、男汁もポタポタ落ちてきてそれがボーの目に入ってきてんのにボーはただ呆然と「お前誰や」って顔しながら硬直。もうギャグじゃん。笑うやん?でも後から「あのおじさん誰?」どうやって入ってきたん?てかいつからそこにいた?とか、いろんな疑問が浮かんできて、よくよく考えたら「知らないオヤジが浴室の天井に貼り付けてる」ってめっちゃ怖くない…?ワンシーンでは笑えるんだけど、後からジワジワ恐怖が滲み出てくる……これが本作の醍醐味、真骨頂!?いやー今回はこう来るかアリ・アスター!!!まさに「コメディ」と「ホラー」は紙一重、それをこんなテイストで表現してくるなんて……



そんな前半はとにかく「笑えて」、そこから中盤で本編179分という長尺を思い知らされる「流石にちょっとダレる」こともあるのですが、、、、、と思ったらクライマックスで「アンタ阿保か。」とドイヒーなイチモツネタをぶっ込んでくる……!?途中湿っぽくもなりますが、最後まで見た方ならわかるでしょう「コメディ映画」……間違えた世にも奇妙な「ブラック・コメディ映画」__。



「ジョーカー」のガリガリくんから今回は中年体型のだらしないキャラクターを見事に“怪演”しているホアキン。ボーは一言で言うならば“残念な人”というレッテルを貼られてしまうような男かもしれない。しかし彼には独特なユーモアそして愛くるしさがあってなんだか応援したくなる、そんな魅力が詰まった素晴らしいキャラクターですねぇ。ただこれまでのアリ・アスター作品で愛だけの“毒っけのない”キャラクターなんていたかい?っていう話なんですよ……(詳しくはネタバレになるので控えます)



今作は早い話がボーが怪死した母の元を訪れる「里帰り」の物語。ただ本来自分は気乗りしなくてもせめて親孝行だなんだ、いいことしてんなーって思うでしょ?












「里帰り」全否定ってね





里帰りして「誰も得しない」のよ!?もうビックリですよ“里帰り=良い行い”を真っ向から否定して里を“一生の生き恥をさらされる”場所に改悪している!?やっぱりアリ・アスターさん“相変わらず「タチが悪い」”ホントに性格悪いわ……ウソです



そんなアリ・アスター監督が“人の幸せをぶち壊す”ことで欲を満たしていることが今回も露見してしまったわけでありますが____A24スタジオが“史上最高額”の制作費を費やしたとはいえ“刺さる人だけ刺さればいい”モットーは変わらず、本作もまた“一極特化型”の挑戦的な作品であることは言うまでもなく、当然今作も過去2作と同様に一筋縄ではいかないシナリオで、ファストフードの添加物より多い“伏線”&メタファーのオンパレード。そして公開直後より待ってましたと言わんばかりに“自称”を含む評論家・ライター達による考察合戦がネット上で今まさに開催中ですよね。でその波に私も興じてアクセス数を……なんて思いましたが、他のレビュアーと同じことをしても面白くない。真面目な考察は他サイトで読めばいい。私はココで一言「これは“デカマラ”映画だ!!」と叫べればそれでいいのです…??







 
【感想(ネタバレ)】





いや公式さん「モザイクかける場所違うでしょ?」













「スリザー」のジェームズ・ガンでもデフォルメするわ!!





終盤屋根裏に現れる怪獣おち◯ぽ星人……あれは流石に調子乗りすぎビンビン丸、というか序盤で飲んだ薬の副作用?さすがにボーの“妄想”の影響だと思うが(一度死んだはずのアーミーメンもまた出てくるし)思えばこの映画「一体どこからボーの“妄想”なのか?」が焦点になってきますかね?本作のOPの製作プロダクションロゴ“MW”は実はボーの母モナの会社のロゴで作中至るところに出ていて、つまり本作はそもそも“モナの管理下に置かれた作品”であるとかね?(だからエンディングまでモナ完全勝利なわけ)全身入れ墨の男とボーを車で轢いた夫婦はモナの会社で働く従業員だったとか、もうネタを探せばキリがないくらい数多のレビューサイトのネタバレ・考察論で書かれてるわけですよ。ただでさえ首のない死体に森の中の移動式劇団の怪しい“村感”は自身の過去作のセルフオマージュだとわかるし、ラストはまんま「トゥルーマンショー」だったり……。実はアニメーションや大掛かりなVFX等、新しいことをやってるようで自身のネタ、名作ネタの良いところだけをかいつまんで作ったような、新鮮味は実はそこまで感じないという……長編3作目にして早くもネタ切れか?とも思ってしまったり。 



まぁでもあるレビュアーさんが言ってたんですが、あまり“考察ありき”で観ると本作の“没入感”が阻害される、楽しさが半減してしまうと。確かになーと。どの考察レビューよりも一番しっくりきた。あの前半のボーの住むめちゃくちゃな街……あれ自体はボーの“被害妄想”だとしても、あのありえねぇ世界を単純に笑って面白がった方がいいわけですよ?そしてその“笑い”が実は“狂気”の何者でもない、ということに気付かされなくてはいけない。割と序盤の方でビルから飛び降り自殺しようとする男を下にいる人が散々煽ってスマホで撮影したりして、そのあと本当に飛び降りてそのまま夜まで死体が転がっている。これこそまさに笑い=狂気を表現しているし、アリ・アスターが視聴者に問い詰めたかった一つ、ではないでしょうか。



それにしても初恋の相手と数十年越しのおせっくすの夢が叶った途端に殺すとか童貞の夢も迷わず玉砕する何もそこまで残酷にせんでも……と思いたくもなりますが、クライマックスでボーが“裁判”にかけられるシーンありますよね。あれってつまり「親子=ギブ&テイクの関係」ってことが言いたいわけですよね??



親が子に愛情を注ぐのは“当たり前ではないよ”とはっきり言われているような。ボーの幼少期、母モナはボーに対して沢山の“愛”を注いだ。けどボーはモナに対して時に卑劣で残酷なことをしていた……それはギブ&テイクの意に反している!不公平だ!許せない!!もう一度生まれたての赤子から人生やり直せ…!!でもって最後ボーは水の中=胎児へと強制的に戻された。夫婦間ならそれでいい、友人間ならいいだろう、でも“親子”じゃん?親は子に将来的に自分たちを養ってもらうために大事に育てているのか?子に愛を注ぐのは未来の自分への“貯金”なのか…??私はそうは思いたくない。それこそ“親のエゴ”であるから。親が子を愛するのは“産んだ責任があるから”ではないでしょうか?ボーは思ったはずだ、そんな自分に期待するなら“なぜ自分を産んだのか”と……。



「ヘレディタリー」から続くアリ・アスターの「家族の“呪い”」シリーズの集大成的な作品となった本作。彼の実体験が関係しているようにも思えなくもない「ヘレディタリー」のアニー、「ミッドサマー」のダニー、そして今作のボー。3人が共通する“愛する者に拒まれる恐怖”こそが、最も身近で関わりたくない恐怖、それはボーだけじゃない我々が“おそれている”ことかもしれない。そこをえぐってくるアリ・アスターは、やっぱりタチが悪い天才だと思います……。


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