ベケット(2021)
- ラーチャえだまめ
- 2021年8月28日
- 読了時間: 7分

【原題】Beckett
【監督】フェルディナンド・シト・フィロマリノ
【出演】ジョン・デヴィッド・ワシントン ボイド・ホルブルック ヴィッキー・クリープスほか
【あらすじ】
休暇で訪れていたギリシャで、凄惨(せいさん)な自動車事故に巻き込まれたアメリカ人旅行者のベケット(ジョン・デヴィッド・ワシントン)。やがて彼は、自身が政治的陰謀の渦中にあり、身の危険が迫っていることを知ってアメリカ大使館に助けを求めようとする。政治的騒乱のもと、警察と当局の追跡を必死にかわしながら大使館を目指すベケットだが、さらに陰謀の奥深くへとはまり込んでいく。(Yahoo!映画より)
【感想(ネタバレなし)】

『結論:助手席で寝られるとキチぃ。』
どーもどーもラーチャえだまめです。早速ですが本日はネットフリックスより配信中のコチラの映画を拝見させて頂きました。ギリシャで恋人とバカンス中のどこにでもいる観光客Aすぎる名もなき男改め一般ピーポーで終わる“ハズ”だったあるアメリカ人男性が?突如異国の地で命を狙われる羽目になってしまうサスペンス映画

【ベケット】…!!!なーに“テネット”みたいなタイトルつけやがってチックショー!!!!主演はその「テネット」のジョン・デヴィッド・ワシントンでございますいやー売れたよねこの人。もう“親のレインボーフラッシュ”なんて言わせないデビュー作「ブラック・クランズマン」から最新作「マルコム&マリー」のあの白玉ゼンデイアとマシンガン痴話喧嘩を炸裂させてくれた“実力派俳優”としてすっかり茶の間に定着したと言っていい、そんな「テネット」で実は“ケンスイヲタ”であることが発覚した無敵の名無しの権兵衛のワシントンが?元フットボール選手でアスリート体型だった肉体をわざと崩してぽっちゃりでもムキムキでもない“フツー”の体型の“フツーの戦闘力”の“フツーの男”を全力で演じているという……CIAでもMI6でも元特殊工作員でもないフツーの男がいきなり命を狙われてしまう、いやー一体どんな逃避行を見せてくれるのか非常に気になりますよねー。あ一つ言わせて下さい

食い方は汚い(フツーじゃない)
■旅シネマinギリシャ&異国でただの観光客から指名手配犯になる怖さ
今年はコロナで海外旅行も断念……なんて方のために作られたのではないか?もう見てくださいよってもう

世界街歩きin逃亡者
命狙われてて景色なんて拝む余裕なんてないとかまずは一旦置いといてですね、本作はまさに「映画で旅気分」出来ちゃうとんでもクライシスな“THE旅行映画”だと思うんですよねー。過去にもジョニデとアンジーの「ツーリスト」やアナキンがスフィンクスの頭上でお茶会したのが未だにバレてない「ジャンパー」、織田裕二が「どうして現場に血が流れ…」「アマルフィ」などなど……「ローマの休日」だって忘れちゃいけない海外のすばらすばらシィ〜ロケーションをバックに展開される映画、観光協会ともタッグを組んだ観光映画などあるのですが___今作の舞台はゼウス様おっつーな今なお古代神殿アリストテレスに残る「ギリシャ」なんでございます。いやーもうすごいです。これはもう実際に映像を見てくだせぇと言う他ない

広大な自然と古代遺跡、、、だけじゃない山の麓にある農家や下町感ある市街地などなど…ギリシャ全面協力の元?大規模な撮影を決行しているんですね。もうこれだけでも見る価値アリストテレス。なかなか外出できない今だから海外に旅行している気分にさせてくれること間違い無しのトリップ映画なんですねー。
序盤はただの観光客のイチャイチャっぷりを見せつけられるだけですからね?なんだよこのプライベート感。裏山すぎるぞ。しかもワシントン演じるベケットの顔のニヤケ顔が止まらないのも無理もないアリシア・ヴィキャンデルが彼女とかそりゃずっとニヤけるわ!!ああ〜これはアリシアと疑似海外旅行している錯覚に陥ってしまう危険性が……なんて思っていたらベケットの居眠り運転が原因で車がクラッシュ&アリシア演じる恋人のエイプリルが一瞬で帰らぬ人に…。おい何してんだよベネット!!でも私ならちょっと責められないかな。長時間運転で助手席で勝手に寝られた時の辛さわかる人ハーイ。

自身も重症を追うも言葉の通じない地元病院で目覚めるベケット。恋人の死を伝えられるもなかなか現実を受け止められない。彼女のいた幸せな日々に戻りたいウゥゥ……しかしギリシャに逆行装置はなかった。事故現場で彼女の血痕あとを見てそこでなんとか彼女の死を認めようともがき苦しむベネットの前に突如現れた警官が何のためらいもなくベケットに向かって銃を発泡してきた!?
ただの悲劇の観光客から一転、何の罪だか命を狙われる逃亡者に大変身。まぁ「なぜベケットは追われる身になってしまったのか」これはもうぜひ本編でお確かめ頂きたい。面白いのが「アーユースピークイングリッシュ?」が通用しない土地での逃亡劇という点であります。いくら英語圏ではないと言え全く通じない、というわけじゃないんだけど、それでもその土地のローカルルールとかどんな人が住んでるのとか全くわからない状態で「助けてくださ〜い!」って言う勇気よ?とにかく命狙われてるからワラをも掴む想いで頭を垂れるベケットの“必死さ”がひしひしと伝わってくる感じがリアルでしたね。
しかも先述したように今作では敵に立ち向かうのではなく逃げ続ける役。敵に捕まりそうになって命からがら助かるようなシーンも多く、そういった意味でも常に緊張感があるサスペンスとなっております。
■幸も不幸も神さまから与えられた“運命”?
ワシントンとヴィキャンデルの他にも「ローガン」「ザプレデター」でキザな傭兵役を演じたボイド・ホルブルックが外交官役として出演、そのホルブルックとワシントンはアメリカ出身、ヴィキャンデルがスウェーデンのスターで音楽はジャポニカ代表坂本龍一、そして監督はあの不朽の名作ホラーを今世紀最大の意味不明映画に大胆不敵に作り変え賛否両論巻き起こしたイタリア監督ルカ・グァダニーノの作品でセカンドユニット・ディレクターを務めたフェルディナンド・シト・フィロマリーノというワールドワイドなスタッフ・キャストですね。ちなみにグァダニーノさんは今作で製作にもクレジットされております。大丈夫です。今作はそこまで難しい話ではございません。強いて言うならOPで登場するこの言葉

ゼウスが信託を下した場所?信託?三井信託銀行ですか?てちゃいますやんちゃいますやん“神託”ですやーん。ベケットとエイプリルが最初訪れる神殿こそ“デルポイ”と呼ばれる神のお告げ、神意を他に託す“神託所”と呼ばれる古代ギリシャの聖域なのです。このデルポイの神託所には“人々の運命を左右する”役割があるとされていて、つまりそれがベケットに課せられた運命を表しているという?恋人を亡くしたのは運命、そして詳細は伏せますが国を変える“英雄”になっていくのもまた運命、そんなある一人の男の数奇な人生の物語を描いているのです。こう言うと少し宗教的かもしれませんね。
しかしその“運命”というテーマが時として本作の「神」であるフィロマリーノが原案も担当したという、そのちょっとしたシナリオの“わざとらしさ”にも繋がっていると言いますか、それが作品全体の雰囲気にむしろ合っていないような?序盤までは無理ゲーすぎるアクションもない外国で言葉が通じないなど映画らしさより現実らしさを重視した逃亡劇を見せてくれているのに、中盤のデモ隊に偶然出会う場面で「ちょっと都合ケイン良すぎなんじゃない?」とそれまでのリアル路線から急に映画的な演出になっているというか勿体ないな〜!!それまで良かったのによぉ〜!!

デモ隊と政府が中央広場でガチンコに相まみえるクライマックスシーンは圧巻です。ニュース等で流れる実際のデモ映像を流用するのではなく本作のためにわざわざエキストラを総動員して撮影されております。社会の緊迫した空気(テーマ性はあまりないが)もまたリアルで、ベケットの置かれる状況下のように“常に安息の地はない”ことを表しているような……異国の地ではそれが余計に感じてしまうかもしれません。
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