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ピンク・クラウド(2020)


【原題】The Pink Cloud

【監督】イウリ・ジェルバーゼ

【出演】ヘナタ・ジ・レリス エドゥアルド・メンドンサほか

【あらすじ】

高層アパートの一室で一夜を共にした男女ヤーゴとジョヴァナを、けたたましい警報が襲う。強い毒性を持つピンク色の雲が街を覆い、その雲に触れるとわずか10秒で死に至るのだという。2人は窓を閉め切って部屋に引きこもり、そのままロックダウン生活を強いられることに。事態は一向に好転せず、この生活が終わらないことを誰もが悟り始める。(映画.COMより)






 
【感想】

『でもWi-Fiは消さんといて』

 




どーもどーも幼少期に笑う声が高すぎて一時期あだ名が「パー子」でしたラーチャえだまめですウソです。本日はそんなピンク色の狂気……「10秒間触れると死ぬ」謎のピンク色の雲の出現により人々が終わりのない「自粛生活」に突入してしまうハッハアァーーーーッ!!!!



【ピンク・クラウド】!!!……おいおいまたしてもロックダウン中に何か撮れないかとよもや右往左往した映画人により生み出されしアイデア商品……て思いたくなるのも無理もない。しかし!本作が作られたのは西暦2019年の「コロナ前」の世界だったー!?として、それから2年後の2021年ノストラダムスも予言出来ない「時代が追いついた『寓話』」だとサンダンス映画祭で脚光を浴びた1本が、ついに日本上空もピンク色にヨメイヨシノする勢いで出現してしまったー!?



いやー幸か不幸か現実世界とシンクロしてしまった本作ですが、ワンシチュエーション「立て篭もり系」としては?続々と量産された“コロナ禍”MOVIEの「あと」にパッとまるで突然の乱気流の如く劇場に現れ、うーんまたどうせ身動きも取れずストレスで頭がピンク色にハゲるか部屋でずっとピンク映画観るくらいしかすることがない退屈な日々を映し出すかあるいはゾンビか浮遊霊の手を借りてそれなりのハラハラ映画を撮るか……の2択だと思っていた矢先













予想を超える「様々」な社会問題をテーマにした






現代社会の闇を浮き彫りにした(雲…だけにねッ!!)とんでもクライシスな雲、だったんですねー。






 





何の因果か現れた殺人雲。たまたまナイトクラブで出会った金持ちの男ヤーゴとテイクアウトされた女ジョヴァナ。。ジョヴァナはサイレンと共に突如始まった国の「外出禁止令」により仕方なくヤーゴの家でしばらくの間お世話になることに……「きっとすぐ元通りになるよ。」家族や友人は皆口を揃えて言う。ジョヴァナも初めは「見知らぬ男」と一つ屋根の下での共同生活、という異常な光景にも「ちょっとした辛抱」として受け入れた。むしろ欲しいものはネット通販でなんでも買ってくれるし食料は国からドローンで仕送りが来る(ピンク色のジュースというケンカ売ったゲロマズジュースはいらん)整体師なの?ヤーゴに施術され気長にストレッチ、代わりにヤーゴの誕生日を祝ってやったりと……この「期間限定」の生活にもむしろ「慣れ」すら感じ始めた















そこに、雲はまだおるんか?






半年、1年、2年、3年……「まるで消える気配のない殺人雲」。いよいよイチモツの不安が2人を襲い始める。「一体いつまで自粛するのか?」先の見えない恐怖。家族・恋人・友人たちと直に会えないストレス。「本当にこれはコロナ前に撮られた映画なのか?」それほど我々がついこの前「経験」したものに近い世界を!?これでもかとリアルに描いている所にビックリしてしまいましたねー。日本は結果的にロックダウンしませんでしたが、ロックダウンした国・街ではまさにこの映画のような事態が起こりえていたのではないか?と。



さらに夫婦間の問題、子育て問題に親の介護、婚活、心のケア、そしてVRの仮想現実にのめり込んでしまうなんていう問題にも?本作は現代社会が抱える様々な問題にメスを入れている引田テンコモリモリな内容にも驚かされました。まぁ「外出制限」という環境下だから……と思いたくもなりますが、しかしこの問題は何も“自粛期間”中にだけ起こる問題でもないと言うか、本作は“コロナ”をテーマにしたわけではないので違うと思います。



そしてそれらを端的に言い当てる「名セリフ」がまた実に多いこと!!何気ない会話の中でフッと出てくるんですよね。一つ例に挙げると、素性も知らない2人が突然新婚生活みたいな共同生活する様が「インドの結婚」に例えるシーン。「会ってはじめましてから始まる夫婦」??インドはお見合いしてすぐ両親が勝手に決めた婚約者といきなり夫婦の契を結ぶの?好きになってから結婚じゃないんです。結婚してから互いを好きになるんですって!?いやこれマッチングアプリとか婚活アプリに意外と近いんじゃない?お互い出会って相手のことをよく知っていいなぁと思ってから付き合うんじゃなくて、付き合ってから相手のことをちゃんとよく知り始める……という意味で(2、3回のデートで相手のことなんざわかるわけねえ!)この2人もワンナイトした仲から徐々に恋愛感情が芽生えるわけだし恋愛が先か同棲が先か……卵が先かニワトリが先か問題と一緒なんじゃないかって思っちまうぜ!



ある日ヤーゴが「子どもを作らないか?」とジョヴァナに提案する。「子どもはいらない」とキッパリ断るジョヴァナ。食い違う2人の意見。ヤーゴはこの外出制限下ならば子どもとの時間も充分に作れる。だからきっとよりよい家庭が築けると言い出す。反対にジョヴァナは「こんな世界では子どもが可哀想」だと。うーん私はジョヴァナの意見に完全に賛成ですねー。「こんな世界」そりゃそうだろと。いやしかしここで少し言い方を変えて「このご時世」……うーん今子ども育てるの大変だしな〜養育費とか色々お金掛かるし……男は理想、女は現実を見るってよく言いますよね?



でもって“事実婚”から終いには“事実離婚”にまでして「別居しよう」いやいやどうやってするねん……と思ったら1階と2階で別居して「3日ごとに子どもと過ごす」というルールを設ける2人。いやー現実世界でも離婚した元夫婦でそのようなルールを設けて互いに公平に子どもの面倒を見る……なんてパターンあるんでしょうけど、ある日ヤーゴのいる2階に上がろうとする子どもに対してジョヴァナが「今日はママの日だから一緒にいなさい!」……“ママの日”ってなんだよ、そんなのアンタらが身勝手に考えたルールじゃねえかあああああ!!!子どもはアンタの“モノ”じゃねえん……



とまあそんな具合にですよ!?さっきから何が言いたいのかと申しますと「現実世界」とリンクして考えてしまうということ!?監督は今作が長編デビュー作のイウリ・ジェルバーゼという女性監督。そうか今言った結婚事情に子育て問題等……女性目線で描かれている所があるかもしれませんねぇ。



時が経ち「殺人雲のおかげで家族と過ごす時間が増えました」と殺人雲を「肯定的」に考える者まで現れたり「with ピンク雲」アンバサ……それほどまで我々が「共感」しえてしまう要素が多いというか、これが今作の最大のポイントかつ未来予想図Ⅱばりの“予知能力”映画としての圧倒的な存在感を放っている恐ろしい映画なのではないかと。



しかし所々にコメディスパイスが振られているからあまり重くならずに見れるのがまたいいんですよね!劇場では笑いが起きる場面も多々ございました。














「雲」より「霧」の方が良かったんじゃないか説ない?




いや雲だと……ぶっちゃけ「避けて」通れないか?人間を察知してものすごい勢いで近づいてくるとかインデペンデンスデイみたいな都市一つ分くらい覆っちゃうメガ巨大サイズならまだわかるのだけれど……え雲ってそれだけ??伊藤潤二の首吊り気球よりショボそう……と意外にも小さくて可愛らしいレベルで皆外出しようとしない思考回路に若干の違和感はある。「霧」ならわかるのよ。外がピンク色で見えなくなるくらい霧がかってたらさ?そりゃ無理だろと説得力もあるというか、、、まあ霧を題材にしたホラー映画はあるし(「ザ・フォッグ」しかり「ミスト」しかり)ネタ被りを避けたかった可能性もありますが



コロナで1週間自宅待機しただけで死にかけた私としては非常に感慨深い救いの無い映画、人間の脆さを見事に見せつけた究極のインドア映画、ですねぇー。

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