ヒルビリー・エレジー 郷愁の哀歌(2020)
- ラーチャえだまめ
- 2020年12月6日
- 読了時間: 8分

【原題】Hillbilly Elegy
【監督】ロン・ハワード
【出演】エイミー・アダムス グレン・クローズ ガブリエル・バッソほか
【あらすじ】
イェール大学に通い、望んでいた職業に就こうとしていたJ・D・ヴァンス(ガブリエル・バッソ)。だが、その矢先に家族の問題が持ち上がり、消し去ってしまいたい思い出しかなかった故郷に戻らざるを得なくなってしまう。故郷で薬物依存症に苦しんでいる母親のベヴ(エイミー・アダムス)と向き合う中で、小さかった自分を育ててくれた明朗で聡明だった祖母マモーウ(グレン・クローズ)のことを思い出すヴァンス。自分のルーツを尋ねながら、やがて彼はかねてから抱いていた夢をかなえようとする。(Yahoo!映画より)
【感想】

『シルバーマン博士ターミネーター説』
いつまでも あると思うな ラーメン屋 どーもどーもラーチャえだまめです。と言うわけで本日はそんなちょっぴりどころの胸騒ぎではないみんな大好き「感動の実話」をご紹介したいのでありますが
【ヒルビリー・エレジー 郷愁の哀歌】!!……これですよこれ!ずっと前から気になってチェックしておりました我らが高所得者向け動画配信サービスNetflixから配信されたコチラの映画、えそんなに?と疑いの眼差しを向ける方もおるやもしれません。そんなアナタに私は逆にこう返したい
ならアナタ予告見てみないよぉぉ!!!これ見てまだそんなこと言えるってのかよおおおおおおおおおお!!!!!!
いやー私お久しブリーフよりボクサー派ですに予告編だけで「あ、これは良い映画だな。」と悟ってしまいました「ヒリビリー・エレジー」!!意味は全くわかりませんただタイトルだけでも覚えて帰ってほしい日本では一部劇場公開されるのか?もうホントに“劇場公開案件”と断言して間違いない老若男女全てのホモサピエンスにご紹介したい、監督は今やすっかり「超大物ピンチヒッター」の仲間入りを果たしてしまった娘さんはまだジュラ紀で遭難中ロン・ハワード監督。そして音楽は我らがハンスと言ったら雪の国の王子、ではなくジマーの名があがってしまうハンス・ジマー氏。あーもうこれはSECOMより安心です原作はアメリカのニューヨークタイムズでベストセラー1位に選ばれたJ・D・ヴァンス著「ヒルビリー・エレジー アメリカの繁栄から取り残された白人たち」をベースに著者のJ・D・ヴァンスの少年時代と成人期の2つの視点を交互に織り交ぜながら彼の半生を描いた映画、、、、となっているのですが半生というよりヴァンス家“親子三代”にまつわる「家族の歴史」がテーマと言った方がいいかもしれません。でもってそれがどうやら原作とテーマ性が異なるようで本国ではあまり評判がよろしくないみたいのですが……

しかし私的には完成された“1本の映画”として、これはこれでヒジョーによく出来た作品だなーと感じましてですね、話を戻すとこの“家族の歴史”という一見名のしれた偉人でもない限り決して学校の教科書には載らないであろう、言ってしまえば“誰の人生にもある”あまりにも身近なものでその歴史があること自体普段から意識などして生活していませんよね?そして他人が根掘り葉掘り聞くものでもない電車で隣に座ってきた見ず知らずの人の“家族の歴史”なんて誰が興味あるねんカノジョとの馴れ初めに次いで個人の歴史ほど“実に興味の沸かない”ものでもあると思うんです。
しかしながらその何気ない顔で横に座っている人からいざ話を聞いてみたら、これがとんでもクライシスに壮絶な歴史だった、、、、、コレはそんな私だってそう、いいやアナタだってそう言えるかもしれない、個人の歴史ほど“十人十色”なものはない本作で描かれるのはそんな「どこにでもある、けど唯一無二の家族の歴史____。」
アメリカはケンタッキー州の自然に囲まれた地で颯爽とチャリを飛ばすヴァンス少年は浦島太郎も見返りを求めたのに道路を横断するクソノロマな傷ついたカメックスも保護する心優しき少年であった。彼の周りには三十路になってもピッチピチな十代を演じられる素晴らしき姉貴とシングルマザーの母親、そして「T2」を100回観ても飽きないという見えすぎたウソをつく祖母の存在があった

はい何かしら賞おめでとうございます〜
ヴァンズの母親ベヴにエイミー・アダムス、そして祖母マモーウにグレン・クローズ。まずは有無を言わせず彼女たちの演技を見てほしい「凄すぎる。」圧倒的な演技。もう言葉が出てこない。いや本当に素晴らしすぎる。実に素晴らしい。どっちから話そう?まずはエイミー・アダムス。クリプトン人と別れたかあるいは異星人とコンタクトした後遺症なのか随分とヤサグレなお母ちゃんであります。

そりゃ子育ては大変ですよ確かにアンタの苦労もよぉーわかるのだけれでも、短期ですぐキレるし時に息子たちに暴力も振るって挙げ句に警察沙汰に発展してしまう言ってしまえば“良くない母親”なんであります。その上薬物にも手を出しヘロイン中毒に……そんな母親を見て時に恐怖し時に“呆れる”ヴァンス少年。正直に言っていい「こんな母親はイヤだ。」それは我々視聴者も同じ気持ちになることでしょう。そしてそれは成人した後もそう。なんとか努力して超一流法律事務所に就職できるかもしれない、そんなチャンスを手にしたヴァンスでしたが……ここでもやっぱり“足を引っ張る”存在。普通は逆なんですよ?親ならば、本来なら息子の将来を後押しする存在が、自分のせいで息子に“迷惑”をかけてしまっている……
けど母親だって“辛い”わけですよ。本当は幸せな家庭を築きたいと思っていたわけですよ。心の底では。

そのヴァンスをいつも救ってくれたのは祖母のマモーウだった。101匹わんちゃんのクルエラが懐かしいしかしその大女優の面影をも完全に消し去ったモジャモジャあたまに牛乳瓶のフタくらいあるメガネ、伸び切ったTシャツを間にまとい腰を曲げながら歩く姿は完全に“田舎のおばあちゃん”のそれであるグレン・クローズ。ビックリなのがご本人と瓜二つなんですよね(ENDロールで確認出来ます)しかもいい歳なのにタバコはふかすわ若者たちに「轢き◯すぞ」と脅す超パワフルばあちゃんで、もうこれまた強烈なインパクトを残してくれる。
ヴァンスには時に厳しくそして時に優しく語る、ある意味母親よりヴァンスのことを理解している“一番の理解者”と言ってもいいかもしれない。自分の子に虐待じみたことを続ける娘を当然叱るが、しかしここまでグレるきっかけとなった“家庭環境”を作ってしまった責任から娘に罪悪感を感じそこまで強く言えない、というジレンマのようなものを抱えているんですよね。

ほかにも我らが「ガール・オン・ザ・トレイン」で団地妻が似合う女優No1に勝手に選ばせて頂いたヘイリー・ベネットが過去の10代と成人期の子持ちの母親の2役を演じ、母親から逃げるようにお嫁に行ってしまった後も母親の身を心配する一面を持つ、そこらへんのビミョーな距離感もうまく演じていると思いましたね。またヴァンス役には少年時代を演じた子役の子と成人期を同じく子役出身ガブリエル・バッソが演じているのですが顔がクリソツ過ぎて本当に同一人物としか思えなくてその恋人……なのかファイナルアンサーしたい「スラムドッグ$ミリオネア」のフリーダ・ピントー演じるカノジョも心優しい女性で……いやー人間ドラマがまぁよく出来ておられる。さすが巨匠ロン・ハワード監督だけあってなんでしょう「安定している」…?
ここで突然ですがクライマックスに登場する「2つの言葉」を復唱させていただきます。
細かい所は端折って申しますと(無論ネタバレも控えます)とにかくヴァンスの半生はそれはそれは壮絶なものだったわけです。人には話したくない(自伝にはしているが)他人からすればその歴史を“黒歴史”とする者もいるでしょう、しかし最後にヴァンスはこう言うのです

「生まれは変えられないが未来は自分で選べる」

「僕の家族は完璧ではないが僕にチャンスを与えてくれた」

よく出来た子やな〜
一つ目の言葉は、それはそれはもう何度も多用された言葉かもしれない、けど何度も言われる程にやっぱりあたり前田のクラッカー的にいい言葉なのは言うまでもなく、そして2つ目の言葉ですよ……!!聞きました?「僕にチャンスを与えてくれた」っていうんですよコイツ!?(コイツて)決して裕福な家庭でもない母の暴力に苦しみながらほかにも色んな苦労をしてきた、赤の他人の私からすれば正直に言うと「家庭環境が良かったら彼はもっと将来的に素晴らしい未来があったんじゃないか?」とか思っちゃうわけですよ!?しかし彼は最後まで一度たりとも、たとえ母親を一時的に嫌いになったとしても「憎んだことがない」ヴァンスにとって母親とは

“良い母親じゃない”、けど“愛すべき母親”であった
こっからももうわかるでしょう!?彼にはちゃーんと伝わっていたんですよ「母親の愛」が!!!ダメな母親とわかってはいても子はそれでも母親を愛し、そして母親も子を愛していたことが、、、、最後の最後まで見ればそれがわかってくるのです!!もうマインドにガンガン響いて来るのです!!!だから最後に正々堂々と彼は言えるのです夢に向かって進む自分に対して「家族が僕にチャンスを与えてくれた」と、そう“捉えられる”ことがどれだけ大切なことであるか………!!!
そして彼がそこまで人として成長できたのは紛れもない「祖母の愛」があったからこそ!!祖母の存在が彼を非行少年の道から遠ざけ、学ぶことの大切さや思いやりの心を彼に植え付けたんですよね〜!!ゆえに本作は祖母と母、そしてその息子の3代にわたる物語なのです。
いやー非常に考えさせられましたね。変えられない、他に換えが効かないものってなーんだ?それこそが「家族」。どんなにイヤでも「こんな家に生まれてこなきゃ良かった」などとお天道様コウノトリを恨んでも、それでも家族というものは必ずその人の人生に付きまとってくる。中には本当に辛くて絶縁するという方法もあるでしょう。私はそれが間違っているなどと言うつもりは毛沢東ありません。しかし家族の“あり方”、それは自分自身で変えることが出来る“とき”もある、、、、そんなことを考えさせてくれる素晴らしい1本、オヌヌメです。
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