【原題】New Order
【監督】ミシェル・フランコ
【出演】ナイアン・ゴンザレス・ノービンド ディエゴ・ボネータ ダリオ・ヤズベック・ベルナルほか
【あらすじ】
マリアン(ナイアン・ゴンサレス・ノルビンド)が住む豪邸には名士たちが集い、彼女たちの結婚パーティーが開かれていた。一方、そのすぐそばの通りでは広がり続ける貧富の差への抗議行動が行われ、人々が暴徒と化す。ついにパーティー会場にも暴徒が押し寄せ、晴れの舞台は一転して殺りくと略奪の場となる。マリアンは難を逃れたものの悪夢は始まったばかりだった。(Yahoo!映画より)
【感想】
『これが「人食いアメーバの恐怖」の序章ならどんなに楽だったか』
どーもどーも先日ディズニーシーでプルートのことをダックスフンドと呼んですみませんラーチャえだまめです。またまたお久ブリーフの更新になってしまいました。これからは不定期、気が向いたら……でおこうかと思います。いやーそんなことはどーでもよくって、先日とある映画を拝見してしまったんですねー
【ニューオーダー】…!!!オーダー66を実行せよ。はい閣下……おっとそれじゃないんですか?“秩序”(オーダー)の意味の、なんだか一世風靡“ディストピア”トピアしたSFホラー映画なのか?「直視できない」のキャッチーすぎる謳い文句に釣られて拝見させて頂きました。舞台はメキシコ。「貧富の差」がどんどん進んだ世界で?ついに貧乏人の堪忍袋の緒がプッツン切れちゃったぜ!“一斉大暴徒化”した市民によりメキシコの街が大混乱&大虐殺が起き始めてしまうという!?スリラー映画、なんでありますが…
個人的に決して「画面の中の出来事」だと一概に手を叩いて楽しめるワケではないが、それでも極限までストレス溜めてイカれちゃった民衆たちがなんだかブラックコメディチックに見えてしまう「パージ」みたいな、軽いノリで楽しめるバカ映画みたいな?あるいはもうすぐ“第10”に地区を増やす予定のニール・ブロムカンプの金持ち富裕層に物申す!!否“鉄槌を下す”!!!的な貧乏人による“スカッとメキシコ”映画で楽しめる映画なのかな、なんて思っていたらですよ、次第にこれがただの「貧乏人大勝利映画」ではないことが露見することになるのです……否
当たり前の如く「救いがない」のが前提なのかよ(汗)
へぇーウエディングドレスの代わりに朱肉垂らしたような真っ赤な赤いスーツ姿の新婦ってなんだか現代風でカッコいいですなぁ〜なんて思いながら情熱の国(?)とこれから始まる血を血で洗う反乱を暗示しているかのような……主人公は上流階級クラスの娘マリアン。イケメンな彼氏との結婚パーティーをド派手に開催中。各所からVIPが揃ってマリアンを祝福。いやー“THE金持ち”の結婚式って感じですねぇ。まさに今幸せの絶頂。
まぁこの時点でですよ、私はどーしても“貧富”の「貧」の視点で見てしまうわけです。このすっかり“浮かれきった金持ち共の壮大な結婚パーティー”が、これからどうメチャクチャになるのか楽しみで仕方がない。いいかお前らが今立っているその“金持ち”の玉座の下で、どれだけの一般、否貧乏人たちの屍が転がっているか、考えたことがあろうか?ほうん?これぞ低賃金民族の妬み!!…あ、スミマセン。しかしこのマリアンという女性は非常に正義感が強く、現に自分の結婚会場に“8年前に使用人として働いていた女性の夫”が8年越しにいきなり目の前でひょっこりはんしてきて「お金が足りないから愛する妻の手術費用を払ってくれ」なんて言ってきたらですよ?自分の結婚式当日にですよ?祝の真っ只中ですよ?貴方ならどうしますかって話ですよ?
「いいわ全額払ってあげる。」そういってマリアンは自らの祝福を断ち切りVIPから貰った“ご祝儀”代も使って?その男に200万ペソ……1ペソ何円なん?高額な手術費用を支払おうと動き出すのです。なんて正義感に溢れた女性……!!!いやいやでもそれだけヒトに優しく出来るって“懐に余裕がある”証拠でしょ……自分がク◯過ぎるって痛感させられちゃった!!
そんな正義感バリ高すぎる富裕層新婦に限りなく感情移入出来るようなシナリオなんですよね。でも「人生勝ち組なんでしょ?」……まだ言うか。な色眼鏡で見てしまう私の性格がどんだけ毒されてんだよっていう、捻くれて見てしまうのはさ、「貧乏」だからなんだよ。「貧乏」は人格を変える。そしてそれは誰のせい?全部因果応報自分のせい…?
そして始まる暴動。彼らは「富裕層」にターゲットを絞り一斉に襲いかかる。屋敷に押し入り金目のモノを奪い取る。抵抗する者は容赦なく殺害。そして彼らを“人質”に近親者にさらなる金の要求をする……人質はブタ箱に幽閉され額に番号を記載、名前ではなく番号で呼ばれる。幽閉中は絶えず意味のない体罰・暴力を受ける。まさに“地獄絵図”。そしてマリアンにもその魔の手が___。
目を背けたくなるような場面が多数。そのどれもが“淡々と”展開されていく恐怖。まるでどこかの戦時下の国のドキュメンタリーを見ているかのような気分になる。個人的に86分という決して長くはない尺でこんなにも早く終焉することを望んだ映画も久しぶりだった。
本作の監督、メキシコ人監督ミシェル・フランコというお方は過去にも“救いようのない”作品を数多撮っている常連らしく、本作でも容赦情けゼロカロリー過ぎる胸糞悪さフルスロットルで撮っている。劇中緑色のペンキが登場する。本作のテーマカラーが“緑”なのは明らかですが、メキシコ国旗の緑となにか意味アリストテレスぽかったので調べました。国旗の緑は“国民の希望”という意味があるのだそう。そうか、つまりそれが“ニューオーダー(新しい秩序)”というわけか。ただ皮肉だな。冒頭にも言った、この映画が「貧乏人大勝利映画」ではないことが徐々に判明していってしまうのであります。
この世で一番得するのは、上流階級のさらに上の“数%にも満たない特別国民”とテロリストだけなのかと思っちゃう
カーバーなんであまり難しいことは言えませんけど、もしこんなことが現実に起こったら、貧富という名のコインのウラオモテが反転しただけみたいな、そんな単純な世界にはならないのかと。反乱に乗じてさらに裏で暗躍する組織の存在、皆“保身”の為にあの手この手を使って“非人道的”な行為まで平然とそして粛々と……この混乱で「本当に“得”をするのは一体誰なのか?」……それは是非とも本作をご覧になればわかるんじゃなかろうか。
そしてそんな連中はどの国にもいる。今まさに甘い蜜を吸ったカビみたいにビッチリとはびこっている。これはメキシコだけの未来への警告なのか?いいや違う。私は本作を見て「どの世界でも、どの国でも起きる恐ろしい未来」であると感じました。「武力行使?銃規制大国日本じゃ流石にそこまでは…」なんて安心して直視出来るだろうか?今はまだ「火種」がないだけなんじゃない?いつその火種が飛んできて爆弾に火がついてもおかしくないレベルにまで、この国だって常に不満で満ち溢れているではないか?
この国だって決して例外ではない。貧富の差がどんどん広がり、いつかプッツン切れた世界はこんなにも恐ろしい光景が広がるのか……本作を見てそれがわかったとて、イチ市民で一体何が出来る?答えは何も出来ない。国外逃亡?金無きゃ無理じゃん?なら武器を持って戦う?生き残る為に?……もしそうなったとしても、殆どのヒトはその現実を黙って受け入れるしか、選択肢がない。ならそうならない為にはどうすればいい?そうだ、選挙に行……
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