タイラー・レイク 命の奪還(2020)
- ラーチャえだまめ
- 2020年5月3日
- 読了時間: 6分

【原題】Extraction
【監督】サム・ハーグレイブ
【出演】クリス・ヘムズワース ルドラクシャ・ジェイスワル パンカジ・トリパティほか
【あらすじ】
誘拐された麻薬王の息子を救うため、バングラデシュに向かった傭(よう)兵。だが、金のために請けた任務が、いつしか過去と向き合う自分との戦いへと変わっていく。 (ネットフリックス公式サイトより)
【感想(ネタバレなし)】

どーもどーも夜寝付けない時はひたすら鼻毛を抜きますラーチャえだまめです。今日はコチラの作品を拝見させて頂きました自宅謹慎中(何したんだよ)の方には思わず自宅で映画館気分に浸れるかもしれない??ゴイスーな“アクション映画”がまたまた爆誕してしまいました、その名も【タイラー・レイク -命の奪還-】。

みんな大好きネットフリックスオリジナル作品でございます。いやーこのご時世に重宝するのがやはりネット配信、という事でGWは自宅でもっぱら映画鑑賞……な方も多いのではないでしょうか、しかも今宵ご紹介するこの……テイラーと言ったらスイフトさんしかちょっとわからないんですけど、、、あ、タイラーさんでしたか大変失礼致しました「タイラー・レイク」という名の“凄腕の雇われ傭兵”が“たった一人”でインドの麻薬王の息子を“救出”して迫りくる敵をバッタバッタとなぎ倒していく……なんだよインドにもコンチネンタルホテルあんのかよと疑いたくもなるタイトルからも「ジョン・ウィック」の親戚なんじゃないかと配信後早くも話題になっているんだとかいないんだとか、とにかくスゴいアクションシーンの数々が拝めるらしいのです。そしてタイラー・レイクを演じますのが去年の東京コミコンにも出陣してくれました、ツーショット撮影会のチケットが即日ソールドアウトでファンだったその日一緒に行く予定だった友達を一人失いました

あの海の神様はもう既にいるんすよー
今ハリウッドで最も“神”に近い男、我らがクリス・ヘムズワースという時点で「あ、これは勝ったな」と早くも勝利宣言してしまうかもしれません「エンドゲーム」で見せたあのアズガルド中の民を恐怖と混乱の腹に陥れた“衝撃的なお姿”から一転、ビシッと黒スーツに身にまといエイリアンを駆逐する“イケてるチャラ男”として見事な逆リバウンド劇を見せた我らがオレ様神様、今作ではそんないつの間にかのコメディ路線から真逆の終始シリアスな役どころを演じております。

そして“クリヘム”ファンをさらに歓喜させるかもしれない制作は「アベンジャーズ」シリーズの総監督アンソニー&ジョー・ルッソ、というこれまた今旬なスタッフ。配信後やたらレビュアーが多いと思ったらハイハイそーゆー訳ですか「エンドゲーム」後のスタッフそしてキャストが再び別の作品でアッセンブルっちゃった映画「タイラー・レイク」。そりゃあ皆さん期待したいですよね、それでは早速観ていきましょう
今作一番の「こだわりポイント」となるのはそう、まごうことなく“アクション”でございます。しかもただのアクションではありません

“疑似”ワンカット
映像の編集点をCGでうまく消してまるで“1本の長回しを観ているかのような”映像にする手法。シーンから別のシーンまでカットなくシームレスで進み我々視聴者サイドの体感時間と“シンクロ”することで視聴者もまるで同じ空間にいるかのような、身震いしてしまうような“映像体験”が出来てしまう優れもの。しかもクリヘムが人質となった麻薬王の子どもを背中で守りながら敵地を駆け抜けていく、その鍛え上げられた背中を我々はずっとカメラと一緒に追う、ということはさながら一緒に逃げているかのような、いや彼に“守られている”かのような錯覚に襲われてしまうという?これはファンには流血どころの騒ぎではございません単純に「死ねます」。
監督は「シビルウォー」でアクションスタントコーディネーターを務めたサム・ハーグレイブというバリバリアクション出身のお方(ちなみに本作ではなんとなく容疑者ホアキンフェニックスっぽい風貌のスナイパー役でも出演)今回その縁で監督に抜擢されたのか「シビルウォー」でクロスボーンズを片パン一発で吹き飛ばしたキャプテンアメリカ並のキレのある肉弾アクション、さらに同じくスタントマン出身のデヴィッド・リーチ監督の「アトミック・ブロンド」に敵の一味として出演した経緯からか?アクション仲間という意味でも共通点が多そうな「ジョン・ウィック節」のガンアクションのリミックスでお贈りしてしまう、アクションシーンはまさに文句なしの一級品となっております。

反面ジョー・ルッソが手掛けたという脚本をはじめ全体的にアクション以外の要素が「薄すぎる」ところがやや残念でございました。
ストーリーは単純明快な「救出」のみ。いい意味で見れば余計な思考を張り巡らせる必要もなく誰にでも取っつきにやすい。ただ悪く見れば敵味方の組織図や人間関係、また世界観などが気薄で「重みがない」。特にインドの麻薬王だったり、まだ小さな少年達にすら武器を持たせ戦の駒として働かせる中東の社会問題などもアクセントとして加えられてはいますが、もう少し“史実”を含ませていればまだ説得力があったかな、と感じてしまう。
そしてこれが一番勿体なかった、クリヘム演じる「タイラー・レイク」というキャラクター自体の「薄さ。」彼は過去に愛する子どもを失いそれからずっと「死」に取り憑かれている男なのですが、これがあまりにパッとしない、というか「個性」がないんですよね、主人公なのに。正直これは“クリヘム”というブランドで辛うじて成立させている所が大きいと思いました。死を恐れぬ破天荒なキャラ付けにするにはインパクトが弱く、一般人的な思考を持ったキャラにすると今度は“無敵の傭兵”に合わない。なんともどっちつかずな、非常に勿体ない感じでしたねぇ…。

これがまだ「ジョン・ウィック」のような「非現実味」を逆に楽しむような“コメディ映画”ならまだしも、一括してシリアス路線の本作では内容の薄さが余計に目立った感じ。他にも今ハリウッドで最も注目される“中年オヤジ”こと我らが「ストシン」のホッパー所長ことデヴィッド・ハーバーや“ミスロケットランチャー”なるキャストも登場するのですが彼らもまたもう少し上手く調理出来たような、、、、
先にも言いましたが本作の最大のウリを「アクション」……と捉えればそれでもヨシと出来るかもしれません、ただ何度も苦言を申すようであれなのですが「擬似ワンカット」自体、それこそちょっと前にやった「1917」もそうですし、振り返れば「ゼログラビティ」のアルフォンソ・キュアロンの18番ネタにはじまり、流行りネタとしては既に似たような作品はあるんですよね。これが擬似ではなく本当に120分間ガチで長回ししたさながらドイツ映画の「ヴィクトリア」のようなそんな作品ならば“それだけ”でも充分魅力的なのですが
と本作がその「擬似ワンカット」以外に見どころがあるかと言うと、、、、これまたう〜んという首を傾げる、そんな全体的に惜しい映画でしたね…。
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