【原題】スイート・マイホーム
【監督】齊藤工
【出演】窪田正孝 蓮佛美沙子 奈緒ほか
【あらすじ】
スポーツインストラクターの清沢賢二は、愛する妻と幼い娘のために念願の一軒家を購入する。地下の巨大な暖房設備により、家全体を温めるその家は、「まほうの家」の呼び名の通り、冬は寒冷な長野県では理想的な物件だった。マイホームでの幸せな生活をスタートさせた清沢一家だったが、その幸せはある不可解な出来事をきっかけに恐怖へと転じていく。(映画.COMより)
【感想(ネタバレなし)】
『※家庭用空調で75℃はありえません』
どーもどーも実家を出る時に自宅のローンがまだ残っているのを聞かされ絶句したラーチャえだまめです。本日はそんな一念発起し「夢のマイホーム」を購入したとある一家に降りかかる悲劇
【スイート・マイホーム】……!!!ビートたけしを習ってか俳優の斎藤工が“齊藤工”名義で監督を務めた“サイコホラー”……ですか??斎藤工と言えば私の中ではいまだ「SIREN2」の一樹守のイメージで池袋のナンジャタウンでパネルを探し回った記憶が…(結局なかった)もともと俳優になる前は裏方希望だったそうで映画制作に対するマインドはガチ……日本でも著名な俳優や芸人がメガホンをとるのは珍しくありませんし、ただこれは邦画での話ですがどうしても作品としてはドラマ系が強くてあまりド直球の「ホラー」とか「スリラー」系に転生する人っていないですよね??海外だと俳優のリー・ワネルが「アップグレード」「透明人間」とSFホラーで無双しまくって大成功を収めたわけですし?“元ホラゲー俳優”斎藤工が作るホラー映画……気にならないわけないじゃないですか!?そんな今作は小説現代長編新人賞を受賞した神津凛子の同名小説を元にシンプルに「誰が観てもとっつきやすい」我々観客に寄り添った?映画かもしれません__。
「この家寒いねー」「そうだねー」……いや子どもが熱出すくらい寒いならマイホームと言わんでもせめて賃貸でもうちょいマシな家に引っ越せよおおー!?極端に寒がりな冬の長野県に住む窪田正孝演じる主人公、清沢賢二は妻のひとみと幼い娘サチを支える一家の主人として、これから大きくなるサチの為にも床暖なんてレベルじゃない最強の暖房システム完備のかつ広い部屋の「一軒家」に移り住もうかと検討に検討を重ねていた所に「まほうの家」なる胡散臭い住宅紹介サイトを見つけ展示場に足を伸ばさないかとひとみに提案する。
「押し売りしてきたらテキトーな理由を言ってそそくさに帰宅する」を条件に3人は家を見学するも美人スタッフの口車に「まんまと乗せられ」あれよあれよと新築一軒家の購入にサインしてしまい……
一体いくらで購入したのか、てかインストラクターの年収ってそんな高いんですか…!?問題の「家」ですが元々取り壊す予定だったモデルルームを運良く使用できたそうで、セットは使わず全て実際の「家」の中で撮っているからこその「リアルさ」を感じることが出来ます。(まぁ新築設定なので生活感はあまりないが)
その夢のマイホーム建立までが長い。それはある理由からなんだろうけど、長すぎなのがちょっとワザとらしく見えちゃって……テンポ感を考えれば序盤は思いっきりすっ飛ばしても良かった感すらある。ちょっとくどい?丁寧に描きすぎ?「無音」のまま長々とカメラを回すシーンが監督のお気に入りなのかシーンのメリハリもあまりなく。いや手持ちカメラを使ったり“こだわり”は感じられるのですが…。
反対に人間の嫉妬深さ&嫉妬心の恐ろしさを丁寧に描き、それが本作の「根幹のテーマ」として認識しやすかったり、賢二の周りで次々と不可解なことが起き始めて徐々に追い詰められていく様をゆっくり見せつけるなんて、前半で幸せそうな賢二への当てつけのようにも見えたり。常人が徐々に「壊れていく恐ろしさ」もありましたねぇー。窪田正孝が迫真の演技でムンクの叫びみたいな大変な顔になってしまいますし、はじめ「スマホを落とした〜」のゲゲゲの成田凌かと見間違えた窪塚洋介の引きこもりニーチャンの演技もこれまた凄かったですね。
竹中直人のカメオ出演が「シン・カメ」の中村トオルレベル並の難易度の高さってなんやねん(いや工さん出てたけどさ)
サイゼリアの間違い探しかよ!?
心霊系が苦手な人でもオヌヌメ出来るかもしれない「キモチワルイ」系(気持ち悪いってのはせいぜい台所で川魚のハラワタ抜き取るシーンくらいですが)人間の知られざる“怖さ”が浮き彫りになるような___……そんな映画ですね!!
【感想(ネタバレ)】
オチがハリウッドの某「人形屋敷」と酷似して(いや原作はこっちのが先?)いて勘のいい人はオチが読めてしまいますね。一応ミスリードな展開も用意されておりますが関係者が次から次へと消されていくのでどうしても消去法的に犯人が誰なのか中盤くらいで判明しちゃうのは仕方がない所でもありますが。実はサイコパスが自宅に住み着いていたというとんでもクライシスな「パラサイト」オチはフィクションの中の話だけかと思いきや、海外で実際に似たような事件があったりしてるんですよね……
事件解決後に天井裏の隠し部屋がそのままの状態で残ってるのは流石におかしくない?とツッコミどころのような、しかしもしあの隠し部屋の存在を警察に言っていないとしたら…?(言わない理由もないんだけどね)赤ん坊の黒い瞳に映った顔が賢二の兄、聡の顔にも見えませんか?(そもそもあの時点で奈緒役の本田が実際に目の前に現れた可能性は低い)妻のひとみは賢二の兄弟といえ聡に対して恐怖心を抱いていたから、聡が犯人なのではないかと多少なりとも疑っていたんじゃないか?だからあの時聡の顔が浮かび上がって見えた、というのはどうでしょう?
父親から暴力を受けていた過去が明かされる賢二。それから家族を支える良き父親でありたいと願う一方会社の同僚と不倫をしていたという、それまでひとみの前ではおろか我々視聴者の前でさえ平然と何喰わぬ顔で、裏でそんなことをしていたのか……なんて絶句した人もそうじゃない人も、本田の裏と表のギャップもさることながら、登場人物ほぼ全員が“恐ろしい裏の顔を持っている”映画だった、ということがわかるわけです。賢二の母親だって賢二の殺人の隠蔽&死体遺棄をした立派な犯罪者としての顔を実は持っていたわけですし、唯一のシロだったひとみも最終的に被害妄想によって自分の赤ん坊を手をかけてしまう狂人へと成り果ててしまいます。人間の恐ろしさを描いた映画としてなかなか楽しめた一方、やはりオチが判明してからクライマックス、からのエンディングにかけてダラダラと流すだけのテンポ感の無さ、エンディングまでそのまま疾走して欲しかった(ラストの刑事のセリフも長い)アンバランスながら下手なJホラーよりは「品がある」そんな作品だと思いました。
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