【原題】Crimes of the Future
【監督】デヴィッド・クローネンバーグ
【出演】ヴィゴ・モーテンセン レア・セドゥ クリステン・スチュワートほか
【あらすじ】
そう遠くない未来。人工的な環境に適応するため進化し続けた人類は、その結果として生物学的構造が変容し、痛みの感覚が消え去った。体内で新たな臓器が生み出される加速進化症候群という病気を抱えたアーティストのソールは、パートナーのカプリースとともに、臓器にタトゥーを施して摘出するというショーを披露し、大きな注目と人気を集めていた。しかし、人類の誤った進化と暴走を監視する政府は、臓器登録所を設立し、ソールは政府から強い関心を持たれる存在となっていた。そんな彼のもとに、生前プラスチックを食べていたという遺体が持ち込まれる。(映画.COMより)
【感想(ネタバレなし)】
『アマゾンで買ったチェアがクッソ使いづらい』
どーもどーもカエルの解剖は廃止された代のラーチャえだまめです。本日はそんな理科の実験で“解剖”と聞いて胸騒ぎが止まらなかった方もそうじゃない方も大変興味深いオレだよオレ!!デヴィッドだよ!!!!
クローネンバああああああああああああああああグ!!!!!
ハァ…ハァ…出ました“ゲテモリスト御用達”完全変態生命体デヴィッド・クローネンバーグ。小学生の頃オヤジに「スパイダーマン」の延長で「ザ・フライ」を見せられて以来、私の体内の内側のコスモが爆発して「キミのグロは燃えているか?」トランス状態に陥ったと言っても過言ではない、以来大変お世話になっております。いやーまさか令和5年で彼の新作がスクリーンで拝めてしまうなんて感謝感激諸行無常……御年80歳、まだまだ生涯現役であります。去年は息子ブランドン・クローネンバーグの斜め上すぎる“フェイスパック”でコンニチワ映画「ザ・ポゼッサー」を楽しませて頂きましたが、蛙の子はカエル、いや息子に負けじと99年「イグジステンズ」以来となるお久しブリーフな“SF回帰”ですか巨匠!?いやーこんなん見に行かない理由が思いつかない
あーキモいキモい、キモいわぁ〜(悦)
もうこの人はホントに“肉体をどうにかしたくて”仕方がないのでしょうホントによくこんなの思いつくよな……。
79年「ザ・ブルード」で既に“腫瘍の擬人化”に成功した変態、いや「ザ・フライ」でハエにトランスフォームしたと思ったら「イグジステンズ」で人体の一部を任天堂が魔改造したようなゲーム機を身体に接続……“タブー”なんてコトバは彼の作品には通用せず。長年「身体」への飽くなき探究心と「愛」を爆発させてきた「ボディ・ホラー」最新作?とも言うべき作品かもしれません。なお70年に半自主映画的な同名タイトルの映画がありますが、こちらは引用されたタイトルの元ネタこそ同じですが内容自体に関連性はないとのこと。
この映画、とにかくOPから「道化してるぜ!」連発な非常にクセの強い亜空間映画と言うことは、クローネンバーグファンならば周知の事実かと思いますが
物語は近い将来?時代の変化と共に進化した人類は“痛み”の感覚を失いました…??カラダを切り刻んでも痛くない。血を流してもどうも思わない。ピンヘッドもお手上げなこの“無感覚”状態に陥った人類は“刺激”を一つ失ったことで“生”に鈍感になり、退屈しのぎに自らの身体を切り刻み血を見る者も少なくはなかった…。そんな中人間の身体に意図的な細工を施しパフォーマンスをする“ボディ・パフォーマンス・アーティスト”が注目され、中でも「加速進化症候群」という常に“新しい臓器”を体内で生成する特異体質を持ち、体内で生成した臓器を観客の目の前で“公開摘出手術”するとんでもクライシスなアーティストのショーは人気を博していた……。
その男“ソール・テンサー”を演じるはクローネンバーグ監督と今作で4度目のタッグとなるMr指輪ダンディことヴィゴ・モーテンセン。「グリーンブック」のケンタッキーおじさんの親しみやすさはどこへやらな、今回は白髪に全身黒のフード姿「アソーカ」に出てきてもおかしくはない御年64歳、なんだこの顔面を拭いても拭いてもにじみ出る「色気」は?マッツ・ミケルセンと並ぶイケオジならぬエロおじですよこりゃああー!?(ちょっと違う)
そしてソールを支える助手のカプリース役にレア・セドゥ&政府が人類進化を危惧して設立した“臓器登録所”に勤務するスタッフのティムリン役にクリステン・シチュアート……てもう主役級のお二人が“サイド”役に回ってんだもんなぁ……カプリースはソールとはビジネスパートナーであり恋人であり少々無茶をしたがる彼の身を案じながら、アーティストとして彼が成し遂げようとする芸に協力、誰よりも彼のファンであり続ける一途な女性。対するティムリンもまたソールの作る世界の魅力に取り憑かれていき……男女の物語要素もあり。
ソールが“自らのカラダを犯す”姿はとても官能的かつアートスティックと言うべきか、もうはっきりと「新手のせくぅーす」と定義してしまっている!?「綺麗だとグロく映らない」だと…!?臓器摘出シーンなんてコトバだけ聞くと目を背けたくなるような光景が広がると思うじゃないですか?意外や意外“美しい”という謎の感動の方が勝ってしまうというか?梨汁ぶっしゃあああ!!!するわけでもなくホルマリン漬け?えピクルス?先程言ったこの映画の持つ独特な亜空間に我々観客さえも、さも会場にいる客のように“感覚が麻痺”っちゃうといいますか、そこがクローネンバーグの不思議な魅力(無理な人にはとことん無理ですが)コトバでは説明しずらいですが、グロとアートは紙一重みたいな??
音楽や美術スタッフは長年のクローネンバーグ組。そりゃ「懐かしい」わけだ。そんな最新作は初見さんお断りではなく、むしろ本作はクローネンバーグの世界にどっぷりハマッてしまう中毒性を秘めた大変危険な“新規ファン獲得”に持って来いの映画かもしれませんよクローネンバーグファンよ!?
これまで「身体」に執着してきたクローネンバーグ監督ですが、人間の「身体」を知ること=人類が今後どんな進化を遂げていくのかを知ることに繋がる、と監督は考えているそうな。つまり「ボディ・ホラー」=人類の向かう未来というべきか。ただしそこに「ホラー」とあるように、彼の作り出す未来世界はいつだってどこか違和感のある奇妙でイかれた世界、「恐怖」そのものに映る。それは人間は生物の中で最も進化すること“変化”することに恐怖を感じる生き物、だからかもしれません……。
【感想(ネタバレ)】
ミシュランガイドも度肝を抜くプラスチックを食して涙する?超人類としてメガ進化を遂げた喜び?これぞ人間リサイクルマシンって?んな都合のいい未来なんて……いやいや本来機能を持たない「無価値な産物」という腫瘍に「アート」というメスを施し「価値のあるもの」に錬成することを生業にしてきたソール。しかしラストで彼が証明したのは無価値に思われた腫瘍の無いと思われていた「新機能」、プラスチックを消化し体内エネルギー化するという、これまでにない新しい働きを持った腫瘍の誕生でした。そしてソールがもしそのことに感動し涙しているとしたら、アーティストとしての彼の心情に「矛盾が生じてる」ことにならないだろうか?
ソールは「人類の進化」を目指す研究家ではなく、あくまで無価値な腫瘍に新しい命を吹き込む「アーティスト」に過ぎないからです。この彼のココロの移り変わり様?アーティストを超えた存在として今後は君臨するのだろうか、否アーティストである前に人として“進化”こそが人類にとっての至高の最たるものであることを意味している……??
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