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イノセンツ(2021)


【原題】The Innocents

【監督】エスキル・フォクト

【出演】ラーケル・レノーラ・フレットゥム アルヴァ・ブリンスモ・ラームスタ ミナ・ヤスミン・ブレムセット・アシェイムほか

【あらすじ】

ノルウェー郊外の住宅団地。夏休みに友人同士になった4人の子どもたちが、親たちの目の届かないところで隠れた力に目覚める。子どもたちは近所の庭や遊び場で新しい力を試すが、やがてその無邪気な遊びが影を落とし、奇妙なことが起こりはじめる。(映画.COMより)







 
【感想(ネタバレなし)】

『“幼さ”という名の「罪」』

 



信号待ちをしていたら隣からカップルの話し声が聞こえてきて「ガリガリガリクソンみたいな人とガリガリメガネどっちがええ?え、普通にガリガリガリクソンよくない?」……希望が持てそうですラーチャえだまめです。早速ですが本日はコチラの映画を拝見させて頂きました



【イノセンツ】…!!!“ジュブナイルホラー”ですか??サーモンと“後味の悪さ”に定評があるノルウェー初、本国のみならず世界の映画祭で16の映画賞したという“話題の問題作”がついに日本凱旋。夏休み、とある団地の公園で遊ぶ子どもたち……ありきたりな光景。平和な日常。しかし大人たちの目の届かない所で、子どもたちは“どんな遊びをしているのか”大人の知らない子どもだけの世界というある意味“裏側の世界”を覗いてみたら、トンデモクライシスな“衝撃的な遊び”が行われていた_!?



“狂気”の子どもと言えば76年の「ザ・チャイルド」なんかが思いつきますが……配給会社は待ってましたとばかりに夏休みど真ん中7月28日に“夏休み映画”として劇場公開……もうそれ自体が悪意の塊だろぉッ!?と蓋を開ければ完全“アダルト”向け“スターチャイルドホラー”??なんでありますが、、、、、なんと元ネタは海外でもファンが多い「アキラ」「20世紀少年」の大友克洋の「童夢」という漫画の「インスパイア系」なんですか…?とまあ日本とも繋がりがある(ちな筆者は漫画は未読)ことなのですが……エグゼビア教授も感知できないミュータントキッズ達が大暴れする












アレは“コレ”がしたかったんだろ?






 




“パワースポット”ってなんか引きつけられるよね?姉のアナと妹のイーダが越してきた団地は偶然にも常識では考えられないアンビリバボー的“異能力キッズ”たちが住むアベンジャーズ団地だった…??これがUSAがやると“20世紀フォックス最後の汚点”とも言える某マーベル映画に「ブライトバーン」みたいに赤マントで空を飛ぶところを北欧ノルウェーがやるとこうも違うのか!?セリフでの説明を極限まで排除し、子どもたちの“ありのままの素顔”を見ているかのような自然な演技。一体どのように演技指導をしたのだろうか。姉のイーダ役の子役が“自閉症”という大人でも難しい役どころを見事に演じきっていたり、妹のアナもめちゃくちゃ幼いのにアカデミー級の活躍。ちなみに母親役の女優とは実生活でも親子関係なんだそう。どうりで顔がそっくりなわけだ……。



そんな公園の砂場で遊ぶキッズたちの中に潜む“小さな狂気”。大人の目の届かない所で子どもたちは無意識的に“残酷な遊び”を思いつく。ペットを飼っている方はご注意下さい。思わず目を背けたくなるシーンがあります。そんな倫理観のイカれた能力者が暴走する話だと、たとえ主人公だろうと普通は共感出来ずに敵視するような目で観てしまいがちですが、それがナウいヤング、とりわけ「子ども」だった場合少し状況が異なると言うか。憎たらしさより善悪の区別もまだ曖昧な“幼さ”ゆえ“力の暴走”は避けられないと養護する目で見てしまうというか、誰の助けもなく小さな体一つで抑え込めるはずもない“力”にもがき苦しむ姿に大人として思わずなんとかしてあげたい、いたたまれないような気持ちになる。「童夢」はわかりませんが同じ原作者の「アキラ」とも似ているなと思いましたね。今作が“憎い”のは、この「幼さ」という点です。



よく“子どもは残酷な生き物だ”なんて言いますが子どものころ草むらでバッタを捕まえて脚を一本ずつもいだりアリの巣にホース突っ込んで巣の中を洪水にした記憶はないだろうか?小さい頃にそういった遊びをしていた子どもが、じゃあ全員が成人後に問題を起こすような大人になったり犯罪者になるか?人の痛みがわからないサイコパスになるか?答えは「ノー」でしょう。人は成長するからです。身体もそして心も。そのような子どもの“一時的な残虐性”は“成長の過程”で生じるものというか「興味本位」でやっていることが多いと思うのです。バッタの脚をもいだらどうなる?アリの巣を洪水させたらどうなる?命を奪う可能性のある行為に対する罪悪感より「興味」が優ってしまうというか。ゆえに大人は善悪や命の尊さを学ばせようとする。ですがそれが大人の目の届かない場所で行われることもあるわけで。そうなると知らず知らずのうちに子どもは善悪の判別がつかぬまま、どんどん行動がエスカレートしていってしまうかもしれない。



団地に住む“ベン”という少年がまぁ問題児で団地の子どもらにとっての“危険分子”なんですが、親からネグレクトを受けてるっぽい?彼の問題行動の裏には家庭環境が関係しているようにも思えてしまう。「生まれながらに残酷」な人間っていないんじゃないか?



彼が残酷な行為をするのはまさしく興味本位だし、そこに「力」が追加されるとどうなるか。大人でも抑えきれない程の力を持った子どもなんて、ある意味「最強で最悪なモンスター」ですよ。「幼さ」が子どもたちにとっての「罪」とも捉えられる。



監督は「わたしは最悪。」「テルマ」の脚本家エスキル・フォクト。そういえば「テルマ」も似たような話だったような(昔劇場で見たっかりでほぼ記憶ないが)内容自体は実はシンプルなものをわざわざ2時間たっぷり使って見せる手法は好き好みがわかれるかもしれません。「スキャナーズ」みたいに頭がバッカーンするような派手さはないし「サイキックアクション」とは違う終始地味な展開は、作品の雰囲気がガッチリハマれば最高かもしれませんが……。ラストは「素直にめでたしめでたし」では手を叩いて喜べるような代物と言うより「うーんなんとかならなかったのか…。」やっぱり大人の介入する術もなく「子どもたちだけで完結」するところが、子どもの「成長」とも見れるし、世の中の残酷さが浮き彫りになった瞬間にも見える…。

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