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動物界(2023)


【原題】Le regne animal

【監督】トマ・カイエ

【出演】ロマン・デュリス ポール・キルシェ アデル・エグザルコプロスほか

【あらすじ】

近未来。原因不明の突然変異により、人間の身体が徐々に動物と化していく奇病が蔓延していた。さまざまな種類の“新生物”は凶暴性を持つため施設で隔離されており、フランソワの妻ラナもそのひとりだった。ある日、新生物たちの移送中に事故が起こり、彼らが野に放たれてしまう。フランソワと16歳の息子エミールは行方不明となったラナを捜すが、次第にエミールの身体に変化が起こり始める。(映画.COMより)





 
【感想(ネタバレなし)】

『ぜひ日本版主題歌はミスチルの「旅立ちの歌」で』

 




どーもどーも最近洗面所にアロマを焚いたら遊びに来た友人から「お前の洗面所婆さんの臭いすんの何で?」と言われましたラーチャえだまめです。本日はそんなターボババアないしは獣臭いコチラの映画を拝見させて頂きました



【動物界】…!!いやービックリですよ2024年は“ボンジュールモンスター”の年だったとは…!?オリンピックのウラで大量のサメをセーヌ川に放流したかと思えば?巨大毒蜘蛛を古アパートに飼い慣らそうとして失敗。そして今度はウマ娘もビックリな“アニマルパンデミック”て、どうしたんだフランス!?そんなフランスにモンスターパニックの風が吹き荒れる前代未聞の1年の最中に公開されたのがコチラ。見て下さいタイトルフォントが「情熱大陸」みたいな動物界て……堅苦しいタイトル過ぎて奇想天外でももっとポップだったよ!?そんなアニマルパニックものでありながらフランスで観客動員数100万超えの異例の大ヒット&フランスのアカデミー賞、セザール賞でも最多12部門ノミネートされたという既にアニマルパニックの常識を打ち破ってしまったと言っても過言ではない!?そんな日本でも公開前から話題になっておりましたコチラ











これを米がやったら絶対こうはならんだろうなー。






 




今作は一見「セーヌ川」や「スパイダー/増殖」とは“系統が違う”ような、前者2つは“フランスらしからぬ”とっても「動」なハリウッド寄りなモンスターパニックなのに対して本作は「静」な、いかにもヨーロッパらしい雰囲気という予告編からも異なるものだと最初は思っていたのですが



何の因果か全世界で“人間が動物に変化してしまう”奇病が大流行した時代、、、これがもろ“コロナ禍”を連想させるというか、いや本作の脚本製作時がちょうど2020年のコロナデミック真っ只中だったとはいえ(本作のアイデア自体はコロナ前の2019年からあったらしいが)街中で動物化した人間が暴れ回る“異常”な光景に市民たちが少しずつ“慣れ”はじめている感じがめちゃくちゃリアルで、“異常”だったことが徐々に“正常”になっていくまさに“ウィズコロナ”時代に突入する一歩手前の時代を思い起こさせとても荒唐無稽な話とは思えないリアルがある。



ただのB級モンスターパニックものに見せて、「セーヌ川」「スパイダー/増殖」も実はフランスの貧困や環境破壊といった社会問題を描いていたりと、しっかり現実的なテーマを盛り込むのがフランススタイルなのかもしれません??本作も“共生”がテーマの根源となり、それは自然であったり人であったり親子であったり、LGBTQの差別問題など様々な要素を詰め込んだ寄せ鍋的映画です。ただどの切り口からでも作品を見れるような親切設計で、視聴者の数だけ違った入り方が出来る、そんな映画なんですねぇ。



“現実的な”と言えば特撮面でも、たとえば「スパイダー/増殖」が本物の蜘蛛を使用したりアニマトロニクスを使った“実写”にこだわったのと同様、本作もCGを極力使わずに生身の人間に特殊メイクを施し動物の動きを細部まで研究して演じている。特に“鳥人間”に至っては鳥になりきった俳優をワイヤーで吊るして空撮、、、、というこだわり様。



また“変化の過程”の見せ方は、例えば指の先から小さな動物の爪が生え始めて絶句しながらそれを力ずくで抜く痛々しさはまさしく「ボディホラー」のそれであり、クローネンバーグの「ザ・フライ」を連想させる。そういえば以前フランス映画で「チタン」っていうぶっ飛びカーセ◯クス映画もボディホラー映画でしたね……。「実写に勝るリアリティはない」は当然ですが、本作がここまで実写にこだわったことで物語にもよりリアリティが生まれているんですねー。



ここまでリアルにこだわった背景には“動物界”に飲み込まれたある一組の親子が辛い現実に向き合いながら“最善”の道を選ぼうとする“リアルな親子の感情”を描くためでもあったのです??



開始早々“動物になった妻に会いに行く”ところから始まる時点でもう既にツラタン案件なわけじゃないですか??なのにこれから男手一つで一人息子の“エミール”を育てなきゃならない苦労もある夫“フランソワ”は気さくにエミールに接して悲しむ姿を見せない。母ちゃんはきっとよくなって帰ってくるぞ!なんならこれから2人で新生活がはじまるぞ!楽しいだろ!くらいのテンションでエミールに不安を与えないよう努力する。そんな中妻が森に脱走する事件が発生。フランソワは森に逃げた妻を懸命に探し始める。エミールと森の中で捜索中にフランソワがかつて妻と付き合う前に2人で聴いた思い出の曲を車のプレイヤーで流しながら妻の名前をエミールと一緒に叫ぶシーンとか、妻との思い出に懐かしむフランソワの顔、自分が生まれる前に両親のデートソングを聴いたエミールの顔、2人とも笑みが溢れる父と子のホッコリ共同作業。2人にとって“いい思い出”として記憶に刻まれたであろう、悲惨な状況でも決して悲しいことだけじゃないんだと、そんな希望が垣間見れるとっても素敵なシーン。



なのに今度はそのエミールが妻と同じく動物になり始めてしまうという、現実はなんて残酷なんだ!いずれ完全体となるエミールと「いつかは絶対に離れなければならない」大体のあらすじを読めば、もう大体お察しの通りかとは思います。今作が「ハッピーエンドじゃない」ことくらいはわかるじゃあありませんか?しかしこれがめっちゃ意外なことに












“素晴らしい「旅立ち」の物語”





だったのです!!全く悲しくないわけでは勿論ないんだけど、むしろ「背中を押された気分になる」すごく前向きになれるというか、いいぞ行ったれ行ったれえー!!見ているこっちも応援したくなるというか!?これ要は子どもが親元から「巣立って」いくお話で“動物化”は思春期の子どもの心とカラダの成長にまんま置き換えただけというか



親は子どもに好みとか思想とか自分を投影させたがる。それを「親のエゴ」と呼びますが、その子どもがいつしか自分の知らない「生き物」に変化していくことに対する親の葛藤を描いているんですよねー。でも最終的に子どもがどう変わろうと、それは「受け入れなければならない」事実であるということ、そして親として子どもに「どうしてあげることが一番なのか」これを最終的に考えるわけです。その「答え」が本作のラストだと思うんです。いやーなんとも清々しいサファリドラマ。ハリウッドとはまた違った、けどしっかりアニマルパニックしている「フランス映画でアニマルパニックか〜」と思っているそこのアナタ、フランスのレベル高いっすよマジで…!?

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