【原題】Perfect Days
【監督】ヴィム・ヴェンダース
【出演】役所広司 柄本時生 中野有紗ほか
【あらすじ】
東京・渋谷でトイレの清掃員として働く平山。淡々とした同じ毎日を繰り返しているようにみえるが、彼にとって日々は常に新鮮な小さな喜びに満ちている。昔から聴き続けている音楽と、休日のたびに買う古本の文庫を読むことが楽しみであり、人生は風に揺れる木のようでもあった。そして木が好きな平山は、いつも小さなフィルムカメラを持ち歩き、自身を重ねるかのように木々の写真を撮っていた。そんなある日、思いがけない再会を果たしたことをきっかけに、彼の過去に少しずつ光が当たっていく。(映画.COMより)
【感想(ネタバレなし)】
『「コンドはコンド、イマはイマ。」』
どーもどーもそろそろ月1ペースですら行かなくなったジムを解約しようか迷っておりますラーチャえだまめです。皆さんは毎日の決まった作業、ルーティーンがありますか?仕事も生活のルーティーンの一つですよね。なんでもいいんですよ、大したことじゃなくたっていい……。本日はそんな繰り返される“日々のルーティーン”に幸せをあるということを再認識させてくれる、コチラの映画を拝見させて頂きました
【PERFECT DAYS】。いやーこれはマジで良かった。セリフなんていらないんだよ。都内某所のトイレを清掃して回るおじさんの日常。公開から話題沸騰中のコチラ、役所広司がヴェネツィア国際映画祭で男優賞を獲ったことでも話題になりましたよね。フィルマークスでもかなりの高得点、そんな皆口を揃えて……と半信半疑な薄汚い気持ちで劇場に行ったんですけどね、ちなみにその日は同じく30年ぶりのリバイバル上映で劇場を席巻していた「レボゼア・ドッグス」と2本立てだったのですが、アチラがとにかくしゃべくり倒す「セリフで魅せる」だったのに対し、今作は奇しくもそれとは全く対照的な、主役役所広司のセリフが全体で台本1ページしかないくらい劇中「殆どセリフがない」、「会話以外で魅せる」そんな映画でございました。まさに俳優、役所広司の背中いや「存在感だけで作品を語る」と言っても過言ではない今作で製作総指揮も担当した彼以外の俳優では成立しなかったかもしれないような、本作はまさに「俳優のためにある映画」だと思えてならない___。
なんでこんなにも毎日が愛おしいのだろう___。
24時間稼働する公衆トイレ。掃除してる最中にも使用者が現れれば即座に場所を空け外で待機、使用者が退出したあと中に戻った頃にはまた汚れている……なんて仕事。それでも清掃おじさんこと「平山」は抜かりなく勤勉に働く。遅れてやってきた同業者が平山の様子を見てまるで誰かを代弁するかのように口を開く。「そんな綺麗にしなくてはいいんですよ平山さん、どうせすぐ汚れるんだから……」
トイレの清掃を“底辺のシゴト”だと見下す人もいるでしょう。平山も時に理不尽な扱いを受けることがある。けど彼のような人達がいるおかげで、この社会は回っていられるのです。偉そうな口だけ政治屋よりどれだけ社会で必要不可欠な人材であるか。観ていてそれが本当によーくわかります。ありがとうございます。これは清掃員平山の「密着24時ドキュメンタリー」と言ってもいいでしょう。余計なBGMも挟まずただ黙々と働く平山を、ただカメラに映すだけのドキュメンタリー。監督はドイツ人監督ヴィム・ヴェンダース。ドイツ人が作る邦画ってナンソレ……!?今回初めましてな方でしたが、70年代から活躍されているベテラン監督なんですね。しかもドキュメンタリー映画を多く手掛けている……合点がいきました。しかも海外の人が描く「間違った日本」が登場しない「リアルな日本の姿」を見事にカメラに納めていると言っても過言ではなく?自然な日本をよく描けているな〜と感服してしまいました。
彼にはいつも起床から就寝まで日々決まって行うルーティンがある。この平山の「日常」を延々観ていられる不思議。毎日の繰り返しをただ見せられているだけなのに124分の体感時間が全く苦にならない。中だるみすることもなく飽きるどころか、もっともっと、平山の日常をモニタリングしたくなる。なぜだろうか。彼はいつも「幸せそう」にしているからなんですよ。早朝玄関を開け空を見上げて「今日もいい朝だ」と言わんなかりの笑顔。神社のベンチの腰を据え、木々が風に揺れ重なり、その隙間から太陽の日差しが差し込む「木漏れ日」その瞬間をインスタントカメラで撮って「いい写真が撮れた」と満足げに微笑む。行きつけの居酒屋で一人雰囲気を楽しみながら酒とアテを嗜み、古本屋の100円コーナーでタイトルだけで面白そうな本を探し当てた興奮、帰宅途中の橋から見えるスカイツリーが今日も美しく輝くのを横目にして、週末に行くスナックのママと楽しい雑談を交わしまた笑顔が溢れる……
旗から見ればなんでもないような日常かもしれない。しかし平山の見る日常は、我々の目には映らない小田和正……間違えた「キラキラした世界」で溢れているのです。そして我々は彼の目を通してそれを体験したい、とでも言うかのように画面に食い入るように見つめてしまう。それはもう我々が彼を物凄く羨んでいる証拠ではないだろうか?
そんな彼の日常にちょいちょっと映り込むスカイツリーがまた綺麗なのさ。THE東京って感じ。海外勢にも視野を入れた日本のプロモーションも兼ねているんだろうか。あのアパート、ロケーション最高だよな。さすがダイワハウスが監修してるだけある。本作のもうひとつの“主人公”とも言うべき都内の公衆トイレ。本作はもともと都内の公衆トイレを紹介する短編動画から派生されたらしい。東京の公衆トイレってすげえオシャレだよね。私は偶然にも前に見た「ガイアの夜明け」だったかな?公園の片隅にデザイナーが手がけたモダンアート的存在として再生され、しっかりと機能面でも優れている。日本のトイレってすごいですね(今思えば今作のプロモーションだったかもしれない)
劇中彼が一度も「時計を見るシーンがない」のが気になりました。腕時計をつけるシーンはあるんだけど、日が沈み暗くなると布団の上で文庫本を手に横になり、眠くなればそのまま眠りにつく。そして朝は日が昇る前に自然にパッと目覚める。目覚ましかけなくても大丈夫なのか?清掃のシフトがどうなってるのかはわからないし毎回同じ時間に勝手に目が覚めるのかもしれない、ただ暗くなれば寝て、日が昇る前には起きる生活。なんだか時間に囚われず自然の流れに身を委ねて生活しているようで、なんというか自由人にも見える。彼の“背景”は実は殆ど描かれませんが、この生活が彼の性に合っている気さえする。
彼は自ら望んで今ある生活を手に入れたのか。それとも過去に何かがあって、今の生活に逃避してきただけなのか。それはわからない。けれども今の生活から抜け出そうとはしていないことは確か。キャッチコピーの「こんなふうに生きていけたなら」は「こんなふうに“ずっと変わりなく”生きていけたなら」と言い換えることもできる。繰り返される日々の中で新しいものを見つけるからいいのであって、日々変わる世界を望んでいるわけじゃない……とでも言うかのように。
「今度は今度、今は今。」
とっても印象的なセリフを最後に一つ。“今度”は“今度”でしかなく、“今”は“今”でしかない。今が変化したのが今度。今と今度はまるで別物で、今はいずれ今度に変わってしまう。だから今でしかないこの瞬間を大切に生きよう。忙しなくただ毎日を消費するだけの生き方を見直すきっかけを与えてくれるような、そんな映画です。
【感想(ネタバレ)】
終盤に突然やってくる三浦友和がまたいいのよ。おじさん二人が夜の隅田川のほとりで「影踏み」でキャッキャするって何?この世は愛で溢れてんのか畜生ー!!??
ラスト「パール」のミア・ゴスもビックリな笑っているようで泣いている迫真の演技。この世界は幸せで溢れると同時にやりきれぬ残酷さもある、そんな対極する二つを朝日から感じ取ったのだろうか、そしてまたいつもの日常が始まる……ことに感動?すごいよねぇ、初日の出見ても泣く自信ないわ!!彼にとって全ての毎日が「パーフェクトデイズ」なんだろうね……。
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