【原題】赦し
【監督】アンシュル・チョウハン
【出演】尚玄 MEGUMI 松浦りょうほか
【あらすじ】
17歳の福田夏奈は同級生の樋口恵未を殺害し、懲役20年の判決を受ける。7年後、恵未の父・克と、別れた妻・澄子のもとに、夏奈に再審の機会が与えられたとの連絡が入る。娘の命を奪った夏奈を憎み続けてきた克は、澄子とともに法廷で裁判の行方を見守ることに。夏奈の釈放を阻止するべく証言台に立つ克と、つらい過去に見切りをつけたい澄子。やがて夏奈は、7年前に自分が殺人に至ったショッキングな動機を告白する。(映画.COMより)
【感想(ネタバレなし)】
『“死人に口なし”』
どーもどーもラーチャえだまめです。早速ですが本日はコチラの映画を拝見させて頂きました
【赦し】___。いやーコチラの映画全く存じ上げなかった作品なのですが今年の「未体験ゾーンの映画たち」のトークイベントで偶然知った「シネマンション」というユーチューブチャンネルをですね、ええそれからもう最近は夕飯時に動画を見ながら食事するのがルーティンと化しました(え何の話?)先日の生配信でコチラが紹介されていて、気になって渋谷のユーロスペースさんにおじゃま虫させて頂きましたー
(おぉーでけぇポスターですねぇーはぁいー)
私てっきり「韓国人と英国人キャストによる韓国映画」かと思ったらですね、ニコラスケイジもビックリの「日本人と日本人による日本映画」というね、いや全部間違えていたんですねーはぁいー。面白いのが監督はインド出身アンシュル・チョウハンという日本在住の外国人監督、というですね、日本のアニメーションやスクエニの「FF」シリーズに携わった経験もある経歴の持ち主で、アニメーターとして活躍する傍ら自主制作で短編映画を数本監督して今作で長編2作目らしい。…ていきなり作品紹介の前に監督の話しても意味ないですね、どうぞ“赦して”チョベリバグーググー……コオオオオオオオオオオ!!!(時代錯誤!ギルティ!!!)
「正解のない」映画って、難しいよねぇ。
もう成人だけどシャザムばりに脳天から雷打たれたくらい、これまたとんでもねぇ映画を観てしまったと……「重い。」非常に重い映画。けど「嫌じゃない」___「物凄い映画を観てしまった」という満足感の方が私は勝ちました(心の消耗もハゲしかったけど)物語は7年前に愛する一人娘をクラスメートに殺害され現在は離婚し“別々の道”を歩む元被害者夫婦の元に1枚の茶封筒が送られてくるところから始まる。“裁判所”から送られてきたその“通知”には7年前の裁判で懲役20年の刑に処された当時17歳の加害者少女の“裁判のやり直し”つまり最判の機会が与えられた、というものだった……。
まずキャストの演技に思わず息を呑んでしまいました。愛する娘を失った被害者の元夫婦役にFFキャラみたいな丹精な顔立ちの沖縄出身の純日本人の尚玄……“しょうげん”と読むんですかゴメンナサイ私は存じ上げなかった俳優さんでした、え歌手のMay Jと結婚した人?May J……エガちゃんです(どんな覚え方だよ)とバラエティ、女優と幅広く活躍するMEGUMI。尚玄演じる克も娘には先立たれ妻とも離婚し孤独の中で心に空いた娘の喪失感を埋めるために毎日酒に溺れる日々……顔面クッソイケメンすぎてアル中カラカラとは程遠い“イケてるアル中”って何?カッコよくアルコールヒーハーしてるって何!?は気になるものの娘を想う気持ち、そして加害者に対しての“憎しみ”を感情を押し殺したりしかしそれが思わず漏れてしまったり、そんなリアルな人間を演じていて好感を持てたのですが
それ以上に元嫁、澄子を演じたMEGUMI……勿論ドラマ等で拝見したことありますけどあの裁判所での証言尋問のシーン、いやぁーアレは心が唸ったね。長回しで少しずつ彼女の顔にカメラが近づいていってさ、弁護士から質問される度に徐々に「表情が崩れていく」のよ。“心の動作”が目に見えてわかると言うか、うわぁー凄いなーこの演技。今はチャラ男のサウナー藤森慎吾演じる男と付き合ってて彼女なりに“第二の人生”に向けて?ようやく舵切って進んで行こう、そんな時に再判の通知がきて再び加害者と嫌でも向き合い、そして亡き娘のことも二度も思い出さなければいけなくなるという「苦しみの再発」ですよこれもう。せっかく前に進もうと努力してきたのにその努力を無下にされたような、地獄に引き戻される気分。そんな澄子の逃げ場のない苦しみがヒシヒシと伝わって来る。
そして加害者の当時17歳……だから今は24歳の囚人、夏奈を演じた女優、モデルとして活躍する松浦りょうの演技も凄かった。否主演2人を“食っていた”と言っても過言ではない。よく「性格は顔に出る」と言いますが、クラスメートを殺害した「人殺し」にも見えるし、それから更生して今は「“赦し”に値する」社会復帰させたい、と思いたくもなる。ただ私ははじめは完全に被害者サイドに立って観ていました。いやきっと今作を観た方はみんなそうなると思います。“そういう立ち位置に自然と誘導”させられるからです。夏奈が憎くて憎くて堪らない。そして彼女の肩を持つ、弁護する弁護士の憎たらしさもたまったもんじゃない。コイツらどうせ金と名声のことしか考えてねえんだ被害者や加害者のことなんて1ミリも考えてねぇ!!“ただ裁判で勝つ”ことだけがすべてのビジネスマンですよ!?裁判での主張や“誘導尋問”等ウザ絡み過ぎて見るに堪えない……。が、彼らだって「仕事」としてやってるわけで、そこに自身の心情が絡むのはナンセンス、彼らの仕事っぷりはまさに完璧でムカつくけどそれだけ優秀なんだなと思う部分もあってね。さらに見え隠れする当時の夏奈の状況、次第に「加害者側にも立って見ている自分がいる?」かもしれません。
でも夏奈の「告白」だって、あれが「事実」かどうかなんて彼女以外知るよしもないんですよね。(回想シーンも“事実”だとは言ってない)そこがまた上手い演出と言うか、我々視聴者も被害者と同じようにうーん本当はどうなのだろうかうーん……「何が正解か、わからないことが憎い。」このどこにもやり場のない感情?これがずーっと最後まで続いていく。てかそもそもタイトルにある「赦し」って、加害者は一体誰に「赦されれば」いいんだ__?
社会?法?被害者の家族?社会から赦され法でも赦され、そして被害者の家族からも赦されれば……それで赦されるのか?と加害者は自問自答する。「自分を赦すのは誰だ?」それが永遠にわからない。答えがない。だから加害者はずっと苦しみ続ける。ただそれは被害者もそうなのです。加害者を「赦す」基準がわからない。社会?法?それとも私たち被害者が加害者を赦せばそれでいいのか?「加害者を赦すのは誰だ?」それが永遠にわからない。答えがない。だから被害者もずっと苦しみ続ける……これは加害者、被害者双方が「見えない正解にずっと苦しめられる」映画なのです。
誰もが「正しく」あろうともがくも、それが「正解」かなんて「誰にもわからない」。「正解がない」から「苦しみ続ける」……。勇気がいるかもしれませんが2023年、必見の1本です。
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